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国際日本学部

国際日本学実践科目Bのゲスト講師としてシンガーソングライターのおかゆさんが登壇

2025年01月28日
明治大学 国際日本学部

 かつて日本では、その時々に人気を得た楽曲は、ジャンルを問わず「流行歌」と呼ばれていました。その中の1つであった演歌が<日本の心>という称号を付けられた、「575を基本とした歌詞形態」「ヨナ抜き音階」といった様式化を遂げるのは、1970年代以降と、比較的、近年の現象です。1990年代に生まれたおかゆさんは、一時代前の流行歌の全盛期を同時代体験していません。しかし、亡きお母様を通して、幼い頃から親しんだそれらの楽曲は、心に沁み、人生の一部となっていきました。
 今回の講義では、おかゆさんが、「流し」という、酒場での対面歌唱を通して磨き上げた歌声で、演歌や歌謡曲を自ら現代化していくプロセスを、受講生にお話して頂きました。さらに教室で、学生たち1人1人と目を合わせながら、宇多田ヒカルの母である藤圭子の「圭子の夢は夜ひらく」(1970)を、ギターの弾き語りで披露してくださいました。受講生にとっては、新しい発見の場であったと感じています。
(兼任講師:原田悦志)

<おかゆさんからの授業後のコメント>
今回の講演を通じて、受講してくださった生徒様お一人お一人の真剣な眼差しや姿勢に、思わず熱くなってしまい、時間が足りない!と叫びたくなるほど、最後の一瞬まで名残惜しく、皆さんとの貴重なひとときを心から感じました。

生徒の皆さんのレポートを全て拝読し、様々な視点からの捉え方に感激し、私が今まで感じていた昭和歌謡の魅力が、皆さんを通して、また新たな角度からの素晴らしさを教えてくれました。

普段、演歌や歌謡曲、レコードの音、特に生での流しの歌を聴く機会は少ないかもしれませんが、皆さんの独自の視点から、歌謡曲が幅広い世代に受け入れられる音楽であることを再認識し、私もこのジャンルで勝負し続けていることに誇りを感じ、もっと皆さんと楽しみたい!という手応えを得た瞬間でした。

スナック生まれスナック育ちで、歌謡曲が遺伝子のように私のルーツとして育まれてきた私ですが、生まれてきたこと、育ってきたこと、今生きていること、そしてこれからの人生も、すべては私一人の力ではなく、多くの人々の影響を受けて形作られたもの。私たちは深い根っこの部分で太く強くつながり、生きているだけで無限に広がりながら、出会うべき人々と出会い、相互に作用しながら生きていくのだと思います。この"音楽"という壮大なテーマから【昭和歌謡と人生】についてお話しする機会を頂けた事、これからの未来を担う明治大学の生徒様とつながる事が出来たことに感謝し、多くの学びを得られたことを幸せに思います。

生きているからこそ、誰でもいつでも音楽を楽しむことができますよね?
出会いが偶然ではなく必然であるならば、生きているからこそ、広がりながら出会うべき人と出会い、夢が広がり、自分や誰かの心を動かし、そしてまたつながっていく!
笑顔が嬉しくて、言葉が嬉しくて、近くにいることが嬉しくて、つながっていたくなる。私たちが生きてこそ、すべてがつながっていくのだと、そう思います。

このかけがえのない機会で皆さんとつながれた運命、音楽から生まれた人とのつながりを大切にし、皆さんの幸せと輝く未来を心から願っています!何か少しでも皆さんの未来や人生にポジティブに繋がっていたら嬉しいです。

そしてまたどこかで、皆さんとお会いできる日を心から楽しみにしています!
その時にはどんな音楽が流れているかも楽しみですね!♪

おかゆ
おかゆさんインスタグラム

<受講した学生のコメント>
国際⽇本学部1年 原花瑛
とても貴重な講義で⼤変興味深かったです。今回の講義におかゆさんという⽅がいらっしゃると聞いてから、どのような⽅なのだろうかと楽しみにしていました。実際にお会いして⽣でお話を聞くと歌謡曲や演歌への強い思いが終始感じられて、おかゆさんの講義に釘付けでした。お⺟様とのつながりから始まったおかゆさんの歌⼿⼈⽣のきっかけのお話を聞いて、⼈⽣は思いがけないことから⼤きく変化したり、進み出したりするものなのだと改めて感じました。
また、私⾃⾝、好きな歌謡曲があっても、演歌、歌謡曲についての詳しい知識などはありませんでした。しかし、今回の講義で演歌・歌謡曲がいかに奥深いものか、また、現代の⾳楽にいかに影響を与えているのかということを知ることができ、ここまで素晴らしい⽇本の⽂化なのだから、もっと深く知ってみようと思いました。特に、最近ではシティポップが SNS で流⾏していますが、流⾏っているものを聞くだけでなく、その曲の背景を調べたり、知ろうとする⼈(特に若い世代)が増えれば、この先ももっと演歌・歌謡曲が⽇本だけでなく世界でも盛り上がるのではないかと思いました。
流しという職業も恥ずかしながら、初めて知ったのですが、教室でも実際に歌ってくださりとても感動しましたし興味が湧きました。機会があればぜひまた⽣でお聞きしたいです。

国際日本学部2年 佐々木杏
「演歌は言葉や情報が少なく、その分行間で聞き手に想像させる余白があり、これが現在のポップソングと違う」という点がとても興味深かった。現在のポップソングは限定された状況における限定された感情を描いているため、聞き手は自分に当てはまる歌を選んで感情移入して音楽を消費していると考えられる。これには、Z世代がタイムパフォーマンスを意識して過程よりも結論を重視する傾向にあり、自分で考えるよりも「わかりやすい」結論が 「すぐに」求められている社会性が関係していると言える。
またおかゆさんのながしをやっている、その素敵な背景にとても引き込まれた。歌謡曲へ のこだわりや「スナックと母」のルーツは、おかゆさんにしか語ることのできない物語であ る。おかゆさんの言葉でその物語を語る姿に、「商業的な感覚よりも自分の『好き』『かっこいい』『どきどき』を大切にしている」とおっしゃっていた彼女の魅力が詰まっていると感じた。

国際日本学部3年 小山莉歩
おかゆさんの講義を受け、「流し」という活動を初めて知り、大変興味深く感じました。普段私はライブによく足を運びますが、アーティストとの距離は遠く、一方的にパフォーマンスを楽しむスタイルが主流です。それに比べ、「流し」はアーティストとお客さんの距離が非常に近く、リクエストができる点がとても魅力的だと感じました。おかゆさんの「流し」は、ただ演奏を届けるだけでなく、スナックのお客さんや店員さんまでも巻き込んで、一体感のある空間を作り上げる特別なものなのだろうと想像します。また、講義を通じておかゆさんの歌謡曲やスナックに対する深い想いに触れることができ、とても貴重な時間となりました。
現代ではさまざまな音楽ジャンルが生み出されていますが、おかゆさんの曲には、歌謡曲の懐かしさにシティポップの洗練さが融合した独自の魅力があり、聴いていて心地よさと楽しさを同時に味わえました。 おかゆさんが音楽を通じて届けたい想いや、人々とのつながりを大切にする 姿勢に触れることで、音楽の力を改めて実感しました。私自身もこれから幅広いジャンルの音楽に触れていきたいと思いました。

国際日本学部3年 赤井紀心
今回の講義を受けて、歌謡曲の魅力と流しという職業について深く知ることができた。 まず、歌謡曲についてある。以前、私は「こぶしが利いた曲=演歌」と思い込んでいた が、おかゆさんの講義を受け、歌謡曲は演歌よりも言葉数が多く、洋風で現代的な自由度の高い曲のことを指すことがわかり、演歌と歌謡曲の違いを理解した。特に、吉幾三さんの『俺ら東京さいくだ』はこれまで演歌だと思っていたが、実際の演歌と比較をした際の新鮮で絶妙な現代感に驚いた。また、歌謡曲のテンポを上げて聞くことで、現代音楽らしい印象を受けるという体験が斬新であった。歌謡曲は、その多様性によって時代を超えて新たな楽しみ方が生まれる魅力があると感じた。
次に、流しについてである。流しとは、楽器を持ちながら酒場を回り、客のリクエストに応えたり、自身の曲を弾き語ったりする職業のことを指していた。特に、自分自身の体とアコースティックギター1つで全国を回り、治安の安定しない酒場を回っていたおかゆさんの精神・身体的な強さには、同じ女性としてとても憧れた。特に、おかゆさんが教室で実演してくださった際、観客ひとりひとりと目を合わせながら歌う姿は非常に感動的で、目があっている瞬間は、まるで自分のためだけに演奏をしてもらっているような特別感があった。この「寄り添う音楽」の形こそが、流しの最大の魅力だと気が付いた。
音楽は時代とともに変化していくが、昔に流行っていた古い楽曲が廃れたわけではなく、いつの時代に作られたものもそれぞれの魅力を持ち続けているということが分かった。加えて、歌謡曲や流しの文化は、多くの人に親しまれ、これからも引き継がれていく 価値があると感じた。