卒業生の声
アートベース・リサーチでつながる国境を越えた学びー岸ゼミフィリピンフィールドワークより
2025年03月28日
明治大学
写真1:カルタ形式での授業の様子
写真2 文法の復習
写真3 リア先生の日本語クラスの学生たちとの集合写真
岸ゼミでは、アートを基盤にした教育や研究(アートベース・リサーチ)に取り組んでいます。このアプローチの一環として、学部3年の南條絢音さんと佐藤遥香さんが、今年3月にフィリピン大学での日本語授業を担当しました。彼らはビジュアルアートを活用した授業を実施し、学生たちが日本語の文法を楽しみながら学び、活用できることを目的としました。この授業方法に対して、現地の日本語教師、リア先生からも高い評価を受け、開発した教材を今後の授業でも継続して利用していただくことになりました。以下、本プログラムの企画・開発・実施者の南條さんからの報告です。
▶︎南條絢音(岸ゼミ3年生)
アート手法を用いた教育・研究を実施している実践の視察や、研究者・実践者との意見交換を目的として、この3月にフィリピンへフィールドワークに行きました。午後に予定していたArts-based Research and Learning Forumの前に、日本語クラスを訪問し、アート手法を用いた「〜したことがある」という文型を用いた授業を行うことになりました。その依頼を受けたのは、渡航3日前でしたが、これまでの経験をもとに、佐藤さんと共に、学生たちと楽しめるような授業を準備しました。
当日、遊びながら探求することの可能性を感じました。私たちが準備したのは、「〜したことがある」を表現するさまざまなイラストです。フリー素材のイラストを利用してカルタを作りました。フィリピンの日本語学習者たちは、そのイラストを見て「〜したことがある」という文型を使った文章を作ります。何度も「したことがある」を話したり聞いたりすることで、文法の暗記にもつながりますし、彼らの関心や日常生活を反映した文章が出てくるため、他者理解や文化理解にもつながります。最初は、楽しみながらよく聞くことを経験してもらいたく、「〜したことがある」をカルタ形式で遊びました(写真1)。まず、私たちがその文型を用いた例文を読み上げ、それに合う状況の絵札を取ってもらいます。
例えば、「日本の音楽を聞いたことがある」「寿司を食べたことがある」などです。フィリピンの日本語学習者たちは、言葉が示すイラストを取ります。円になって真剣にイラストを見て、私たちの声を聞いて素早くカードを取る。学生たちは競争心が強く、カルタの札がボロボロになるほど盛り上がりました(笑)。
カルタ遊びの後は、もう一度円になって座り、自分が持っている絵札を使って、その文型を用いた例文を自分たちで作る活動をしました。例えば、「XXの音楽を聞いたことがある」「日本でXXをしたことがある」といった文を通して、私たちも、学生同士でも、それぞれの経験や日常生活について知り合うことができました。午後は、フィリピン大学オープンユニバーシティでABRに取り組む研究者や学生たちとArts-based Research and Learning Forumを通して事例交換をしました。私たちも岸ゼミで取り組むABRの実践について紹介し、活発な意見交換を行うことができました。また、1967年にフィリピンで設立された教育演劇団体PETA(Philippine Educational Theater Association)を訪問し、高校生向けのワークショップに参加したり、フィリピン大学Los Banos校のGian研究室を訪問し、日常生活の中にドラマを埋め込み、遊びながら学べる「バハイバハヤン(bahay-bahayan)」の実践について体験させていただきました。「バハイバハヤン(bahay-bahayan)」の実践では、舞台と観客の境界線を取り払い、参加者全員が演じるという取り組みです。実際に私も体験しましたが、次に何が起こるか分からないままストーリーが進行し、それに自然と引き込まれて身体が動いていく感覚がありました。観客として他人の視点で見るのではなく、舞台に巻き込まれることで自然と自分の視点で物事を考えることができました。この「バハイバハヤン(bahay-bahayan)」という言葉は、フィリピン語で「遊ぶ」という意味です。遊びながら自分ごととして捉え、他者の状況を考えることは、歴史上の出来事、ジェンダー問題、メンタルヘルス問題、政治的問題など、世の中のさまざまな問題に対して、遊びながら探求する可能性を秘めていると感じました。このように、アート手法を通して遊びのように学びや探求を深める手法は、学習者の興味を引き出し、主体的な学びを促進する可能性があると、今回のフィールドワークから感じることができました。
今回のフィールドワークでは、フィリピン大学やPETAの皆さんと一緒にABRについて事例を共有し、議論できたことは非常に有意義でした。これらの経験は、今後のゼミでの研究にも大いに役立ちそうです。このような国際的な場で実践や研究を共有し、さらに発展させていく機会を今後も持ちたいと思います。フィリピン大学のロブ先生、リア先生、ギアン研究室のみなさん、ありがとうございました!
▶︎南條絢音(岸ゼミ3年生)
アート手法を用いた教育・研究を実施している実践の視察や、研究者・実践者との意見交換を目的として、この3月にフィリピンへフィールドワークに行きました。午後に予定していたArts-based Research and Learning Forumの前に、日本語クラスを訪問し、アート手法を用いた「〜したことがある」という文型を用いた授業を行うことになりました。その依頼を受けたのは、渡航3日前でしたが、これまでの経験をもとに、佐藤さんと共に、学生たちと楽しめるような授業を準備しました。
当日、遊びながら探求することの可能性を感じました。私たちが準備したのは、「〜したことがある」を表現するさまざまなイラストです。フリー素材のイラストを利用してカルタを作りました。フィリピンの日本語学習者たちは、そのイラストを見て「〜したことがある」という文型を使った文章を作ります。何度も「したことがある」を話したり聞いたりすることで、文法の暗記にもつながりますし、彼らの関心や日常生活を反映した文章が出てくるため、他者理解や文化理解にもつながります。最初は、楽しみながらよく聞くことを経験してもらいたく、「〜したことがある」をカルタ形式で遊びました(写真1)。まず、私たちがその文型を用いた例文を読み上げ、それに合う状況の絵札を取ってもらいます。
例えば、「日本の音楽を聞いたことがある」「寿司を食べたことがある」などです。フィリピンの日本語学習者たちは、言葉が示すイラストを取ります。円になって真剣にイラストを見て、私たちの声を聞いて素早くカードを取る。学生たちは競争心が強く、カルタの札がボロボロになるほど盛り上がりました(笑)。
カルタ遊びの後は、もう一度円になって座り、自分が持っている絵札を使って、その文型を用いた例文を自分たちで作る活動をしました。例えば、「XXの音楽を聞いたことがある」「日本でXXをしたことがある」といった文を通して、私たちも、学生同士でも、それぞれの経験や日常生活について知り合うことができました。午後は、フィリピン大学オープンユニバーシティでABRに取り組む研究者や学生たちとArts-based Research and Learning Forumを通して事例交換をしました。私たちも岸ゼミで取り組むABRの実践について紹介し、活発な意見交換を行うことができました。また、1967年にフィリピンで設立された教育演劇団体PETA(Philippine Educational Theater Association)を訪問し、高校生向けのワークショップに参加したり、フィリピン大学Los Banos校のGian研究室を訪問し、日常生活の中にドラマを埋め込み、遊びながら学べる「バハイバハヤン(bahay-bahayan)」の実践について体験させていただきました。「バハイバハヤン(bahay-bahayan)」の実践では、舞台と観客の境界線を取り払い、参加者全員が演じるという取り組みです。実際に私も体験しましたが、次に何が起こるか分からないままストーリーが進行し、それに自然と引き込まれて身体が動いていく感覚がありました。観客として他人の視点で見るのではなく、舞台に巻き込まれることで自然と自分の視点で物事を考えることができました。この「バハイバハヤン(bahay-bahayan)」という言葉は、フィリピン語で「遊ぶ」という意味です。遊びながら自分ごととして捉え、他者の状況を考えることは、歴史上の出来事、ジェンダー問題、メンタルヘルス問題、政治的問題など、世の中のさまざまな問題に対して、遊びながら探求する可能性を秘めていると感じました。このように、アート手法を通して遊びのように学びや探求を深める手法は、学習者の興味を引き出し、主体的な学びを促進する可能性があると、今回のフィールドワークから感じることができました。
今回のフィールドワークでは、フィリピン大学やPETAの皆さんと一緒にABRについて事例を共有し、議論できたことは非常に有意義でした。これらの経験は、今後のゼミでの研究にも大いに役立ちそうです。このような国際的な場で実践や研究を共有し、さらに発展させていく機会を今後も持ちたいと思います。フィリピン大学のロブ先生、リア先生、ギアン研究室のみなさん、ありがとうございました!