文学部紀要
フランス文学専攻の授業のうち、いくつかを紹介します。
フランス文学史A・B(担当 田母神 顯二郎 教授)
フランス文化研究A・B(担当 奥 香織 准教授)
主にフランス文学専攻の1、2年生が履修するこの授業では、フランス文化について多角的に学んでいきます。現代のフランス社会・文化は長い歴史のなかで形成されてきたもので、過去の文化や歴史的事象と切り離して考えることはできません。そこで、まずは「歴史と現在」を軸として、フランスの社会と文化、国民性について考えていきます。例えばゴシックの大聖堂(中世)やルイ14世時代の舞台芸術、19世紀パリの社交場としてのオペラ座など、各時代に特徴的な「場」や文化現象を取り上げ、フランスの特質を考えていきます。大聖堂は、建築的な視点から「フランス的精神」について検討することもできますが、大聖堂に関する描写がある文学作品を読んでフランス文化について考えてみることもできます。また、絶対王政で知られる17世紀フランスは、芸術という観点からみると「権力の表象の場」としてのヴェルサイユという側面が浮かび上がりますが、それは結果として現代フランスの芸術文化の礎を築いています。授業では、こうした文化現象について、文芸作品の抜粋や視覚教材を用いて多角的に検討しながら知識を深めるとともに、フランス文化へのアプローチの多様性と可能性についても考えていきます。また、現代社会や地方の文化、映画や演劇作品などの芸術文化にも光を当てます。興味・関心の領域を広げながら、新たな視点でフランス文化を捉えることができる幅広い知識と教養を身につけていきましょう。
フランス語圏表象文化(担当 谷口 亜沙子 教授)
「強制収容所」や「ホロコースト」や「全体主義」という言葉は、もしかすると自分の日常とは関係のない、どこか遠い話に聞こえるかもしれません。この授業の目的は、現代の欧米文化において極めて大きな意味を持ち続けている第二次世界大戦に関する基本的な知識を身につけ、ヨーロッパ・ユダヤ人の虐殺の記憶をめぐる問題や、強制収容所という20世紀を特徴づけるシステムの考察を通して、いま日本で起きていることへの自分自身の向き合い方を振り返ることです。「普通の人びと」が加害に転ずる瞬間、言葉にしえなかった被害がついに言葉にされる瞬間、帰還者や生存者たちのかかえる構造的な孤絶感や、そうした言葉をうけとめる社会の問題などについて考えながら、 ニュースやSNS、あるいは日々の対話における自分自身の「言葉」への向き合い方を鋳なおすことが試みられます。
授業は、毎週のリアクションペーパーとそのフィードバックを通じて、参加者同士が「書き言葉」を交わしあうことによって進められます。自分にとって「遠い」ように感じられていたさまざまな問題が次第につながりあい、肌に迫って感じられるようになるまで、思考を鍛えてゆく作業に参加してみてください。 手掛かりとする資料は、歴史ドキュメンタリーなどの映像資料、フィクション映画、フランスの歴史教科書、文学作品や証言資料など多岐にわたり、フランス語の原文を使用することもありますが、翻訳も併用しますので、フランス語の学習歴に関わらずどなたでも履修することができます。
キーワードとしては、全体主義、管理社会、監視社会、戦争、暴力、差別、いじめ、政治的無関心、不寛容、官僚制度、歴史否定主義、そして、それらに抵抗するものとしての「言葉」をあげておきます。
授業は、毎週のリアクションペーパーとそのフィードバックを通じて、参加者同士が「書き言葉」を交わしあうことによって進められます。自分にとって「遠い」ように感じられていたさまざまな問題が次第につながりあい、肌に迫って感じられるようになるまで、思考を鍛えてゆく作業に参加してみてください。 手掛かりとする資料は、歴史ドキュメンタリーなどの映像資料、フィクション映画、フランスの歴史教科書、文学作品や証言資料など多岐にわたり、フランス語の原文を使用することもありますが、翻訳も併用しますので、フランス語の学習歴に関わらずどなたでも履修することができます。
キーワードとしては、全体主義、管理社会、監視社会、戦争、暴力、差別、いじめ、政治的無関心、不寛容、官僚制度、歴史否定主義、そして、それらに抵抗するものとしての「言葉」をあげておきます。
基礎演習A・B(担当 根本 美作子 教授)
フランス語、フランスという文化を理解するうえでもっとも重要なことを理解するためには、sens critique批判精神が最も重要であると思われる。しかし、これは日本の学校ではむしろ敬遠される態度であるため、フランス文学専攻新入生にとってなかなか身につけることが最初難しいかもしれない。しかし、AIが発達し、デジタル・リテラシーがますます求められる世界では、日本でもこれから個人の批判精神がどんどん必要となっている。権威あるとされる者に対して批判精神(これは傲慢とはまた別の態度である)を持つこと、これを学ぶことがこの基礎演習の目的である。大学教員という「権威」に対しても批判精神をもって臨み、授業中にどんどん発言してもらいたい。
批判精神を育てるにはそれなりの知識や見識が必要であり、そのためには古典を読むということもまた大切である。私たちが日々呼吸している民主主義を理解するうえでかかすことのできない書物、古代ギリシャ、プラトンの『国家』を授業で読みながら、2500年前のまったくの異文化のテキストをどのように読むことができるのか、グループ学習も動員しながら考える。『国家』を歴史的に読むと同時に、フランスの批判精神がもっとも日常的に発揮される政治の問題を理解できるようにする。
春学期はその後、デカルトの『方法序説』を読み、理性というものについて学び、この書物の冒頭に掲げられている理性が等しく人々に備わっているものであるという前提が、実際どのような影響を人間社会に与えるのかを考える。
古典を読むのは難しい。ましてや『国家』は長い本である。『方法序説』も高校生が読み慣れているタイプの文章ではないだろう。そのため、グループ学習で学生同士、お互いの疑問や理解(不平?!)を分け合いながら読み進めていく。
春学期のもう一つの目標はレポートの書き方を学ぶということだ。期待されたことを感想文式に形式的に書くのではなく、わからないことに対して疑問を立てながら文章を書くことによって自らの考えが深まるという経験をしてもらう。
秋学期には今度は発表の仕方を学んでもらう。フランス近・現代の礎となっている啓蒙思想の文章を元に、理性と進歩と民主主義という発想がどのように私たちの生きている現代を支えているのか、批判精神を発揮しながらともに考えたい。
批判精神を育てるにはそれなりの知識や見識が必要であり、そのためには古典を読むということもまた大切である。私たちが日々呼吸している民主主義を理解するうえでかかすことのできない書物、古代ギリシャ、プラトンの『国家』を授業で読みながら、2500年前のまったくの異文化のテキストをどのように読むことができるのか、グループ学習も動員しながら考える。『国家』を歴史的に読むと同時に、フランスの批判精神がもっとも日常的に発揮される政治の問題を理解できるようにする。
春学期はその後、デカルトの『方法序説』を読み、理性というものについて学び、この書物の冒頭に掲げられている理性が等しく人々に備わっているものであるという前提が、実際どのような影響を人間社会に与えるのかを考える。
古典を読むのは難しい。ましてや『国家』は長い本である。『方法序説』も高校生が読み慣れているタイプの文章ではないだろう。そのため、グループ学習で学生同士、お互いの疑問や理解(不平?!)を分け合いながら読み進めていく。
春学期のもう一つの目標はレポートの書き方を学ぶということだ。期待されたことを感想文式に形式的に書くのではなく、わからないことに対して疑問を立てながら文章を書くことによって自らの考えが深まるという経験をしてもらう。
秋学期には今度は発表の仕方を学んでもらう。フランス近・現代の礎となっている啓蒙思想の文章を元に、理性と進歩と民主主義という発想がどのように私たちの生きている現代を支えているのか、批判精神を発揮しながらともに考えたい。