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PICK UP 教養デザイン 「学生が語る」

「現場」と「研究」から広い学び・教育へ

「文化」領域研究コース 博士後期課程 橋口静思

学部学生時代は何を学んでいましたか。



大学時代は夜間学部かつ、ゼミのない第二文学部でした。表現・芸術専修ということで、幅広く様々な講義を受講していました。そのため、専門的にひとつの学問を修得はしていませんでした。その中では現代アートや、映像、文学史、美術史さらには身体論など多様な学問の端緒に触れることができました。さらに、学外活動というか、趣味として通いつめていたライブや音楽フェスが高じて、この時期からコンサートスタッフの仕事をするようになり、その活動はいまだにフリーランスとして続けています。
教養デザイン研究科への進学のきっかけ、動機を教えてください。



大学院に進学しようとしたときに、学部で専門的な研究を一切行っていなかったので、何かひとつを追究しようとすることに悩みました。しかし私は文化・芸術の現場や空間そのものに強い憧れと志がありました。それを考えたときに、学際的な研究に惹かれました。実は在籍していた大学に進学を希望したのですが、学部が改組するため、大学院の募集に1年空白があり、半年間フリーランスとして仕事をしました。その期間に他大学の研究科を調べた時、学際的な研究を推進している教養デザイン研究科を知りました。
最初は故小畑精和教授の懐の深さで拾っていただき指導を受けていました。その後、菊地良生教授に指導していただくのですが、進学から指導にまですべて研究のみならず、これらの視点を教えていただきました。
教養デザイン研究科ではどのようなことに重点を置き、研究や学びを進めていましたか。
「現場」です。
私自身の研究の興味として、美術館を取り巻く環境や、近年隆盛している芸術祭、または音楽フェスなどもそうですが、現場に身を置かないと何も語れません。フィールドワークの手法も何も知らずに進学した私ですが、小畑教授も菊池教授も現場で知り、感じることの大きさを教えてくれました。私自身もその考え方は染み付いていたので、現場から観ることができる世界を重視しています。
また、専門家とそうではない人との認識の乖離は私の重要なテーマでもあります。音楽フェスや芸術祭に訪れる観衆は、なんらかの知見を得たり、批評するために訪れる人はほぼいません。しかし、そこで感じる内容は、非常に重要な感覚だと思っています。言語化されない部分だからこそ、伝わるものが大きい。だからこそ現場も知り、研究としても発信できるということは常に意識しています。
教養デザイン研究科で学んで良かったことを教えてください。
指導教授である菊池良生教授、そして小畑精和教授からは、研究の手法だけでなく、私を含めた院生の将来に関してとても気にかけていただきました。他にもお世話になった先生方は両手では足りないほどです。特に数多くの分野の専門家に様々な視点で思考することを教えていただきました。また、先輩・同期・後輩と多様な院生と交友を結ぶことができました。
現在のお仕事について、また、大変なことや、やりがいを感じることを教えて下さい。
研究の目的が、美術館や音楽の現場をはじめとした文化芸術の空間に入り込むためには、どのような仕組みや空間づくりが必要なのだろうか、というところからスタートしています。講義や実習を行っていて、大学1年生の多くはそういった場にはまだ足を踏み入れていない学生がほとんどです。それは制作を主とする学生も同様です。自分の研究や講義・実習によって、文化芸術の空間の魅力を伝えられることにやりがいを感じています。
実際に教育の現場において感じることは、現在の大学生は私が在学していた十数年前とも異なる環境にいます。文化芸術を取り巻く環境もそうですし、また、思考する力がのびのびとは育てられていないと感じることもあります。自分の中で当然と感じていることを一度言葉にして、順に説明していくことを講義などで実践していますが、この点はこれからずっと続けていかなければいけないものだと考えています。
今後の目標や、目指していることを教えて下さい。
研究と教育の実践を進めることです。論文だけでなく、「みなとメディアミュージアム」という茨城県那珂湊で開催しているアートプロジェクトなどの実践活動も継続しています。学生や地域の方々の感性や意見を受け取りながら、常に現場から離れることなく進んで行きたいと考えています。 

プロフィール

氏名:橋口 静思
所属(研究科コース):教養デザイン研究科「文化」領域研究コース 博士後期課程
研究テーマ:野外美術館についての研究−美術館の展示空間の変遷と個別の事例について−/ミュージアム・スタディーズ
現在の勤務先:宝塚大学東京メディア芸術学部

明治大学大学院