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PICK UP 教養デザイン 「教員が語る」

枠組みにとらわれず思考を掘り下げる

「思想」領域研究コース 井上 善幸 教授



「思想」コースで教えている井上です。わたしの「目下の研究テーマ」の一つに、1960年代の文学と思想に注目し、それらの間にみられるある共通した問題意識を探り当ててみたいということがあります。具体的なところでは、サミュエル・ベケット、ジャック・デリダ、スーザン・ソンタグに光をあて、かれらに共通する思想はなんなのかを考えてみたいと思っています。ベケットは1906年にアイルランドで生まれ、後にフランスで活躍した小説家・劇作家で、デリダは1930年にアルジェリアに生まれた哲学者で、パリのエコール・ノルマル等で哲学を教えていました。ソンタグは1933年にアメリカで生まれた批評家で作家です。国境を越え、言語の枠を超え、ジャンルを超えて、かれらの切り拓いた地平をもう一度辿り直してみたいと思っています。それらを読み直すことにより、既存の知の体系では同定することの困難な未知の領域を開拓できればと願っています。

また、これまで文学と哲学とのつながりを中心に研究してきましたが、最近は心理学、あるいは精神分析の重要性について考えるようになりました。既存の学問の枠組みにとらわれることなく、ひとつの問題をそれらの枠を横断しつつ研究することは、大変刺激的です。そもそも、このような枠組みは恣意的で制度的な虚構に過ぎず、それらに絡めとられることなく、それらの枠組みを懐疑しつつ研究したいと考えています。そのためには、複数の語学の勉強はきわめて重要だと思います。
「コースの特色や魅力」については、このコースは、さまざまな分野に自在に参入することができることだと思います。思想を扱うのですから、ある特定の対象に縛られる必要はありますまい。文学を経済学の目を通して分析することも、哲学を文学に接続することも、さらにはそれらの枠を取り外す作業そのものを批評へと変換することも可能です。美を算術に接続することも、映画を精神分析の視点から考察することもできます。そのような《脱領域》的な思考を涵養する場として、思想コースに身を置き、自由に研究しつつ、新しい学問のありかたを探求してほしいと思います。あなたも知のトンネル掘削作業に参加してみませんか?

プロフィール

氏名:井上 善幸
所属(研究科コース):教養デザイン研究科「思想」領域研究コース
研究分野:ヨーロッパ文学と哲学、批評、アメリカ現代文学、精神分析
研究テーマ:サミュエル・ベケット、ジャック・デリダ、フランス哲学、モダニズム、草稿研究
学位:修士(立命館大学)
主な著書・論文:『サミュエル・ベケットと批評の遠近法』(共編著;未知谷、近刊予定)、「ベケットとオースター」(『明治大学教養論集』2014年)、Beckett and Animals (Co-authored; Cambridge UP, 2013), 『ベケットを見る八つの方法──批評のボーダレス』(共著;水声社、2013年)など。

明治大学大学院