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国際日本学部

JAPIと連携した学生企画のプロジェクトー留学生の就職を支援するビデオ履歴書で取り組み

2021年03月08日
明治大学 国際日本学部

Japiの飯田さん、ミャンマーのNwayさんを含めての毎週のミーティングJapiの飯田さん、ミャンマーのNwayさんを含めての毎週のミーティング

完成形のサンプル映像撮影の様子完成形のサンプル映像撮影の様子

Japiインドネシア拠点との制作にむけての話し合いJapiインドネシア拠点との制作にむけての話し合い

国際日本学部岸ゼミと日本国際化推進協会(JAPI)は2018年から2020年の2年間、留学生の就職支援のための「ビデオ履歴書(Video Regime)プロジェクト」を共同で実施してきました。日本では外国人人材の受け入れに向けて法整備がされていますが、外国人人材/留学生の就職にはさまざまな課題があります。そこで、その問題解決として、学生たちはJAPIと連携してビデオ履歴書プロジェクトを立ち上げました。

具体的には、ミャンマー、インドネシア、ベトナムなどで日本語を学び、日本での就職を希望する外国人人材が、岸ゼミの学生たちとの会話を通して、日本の企業にアピールできるように自分のことを語り、その語りを1分ほどの映像にまとめていきます。岸ゼミとJAPIは、日本での就職を希望する外国人人材/留学生が、自分の人柄、性格、信念、価値についての語りを生み出し、映像にする過程を一緒に行いました。これは、外国人人材/留学生の就職能力(エンプロイアビリティ)を高めるプログラムとして、さらに、異なる文化間の学生たちが会話を通して相互理解を深める点において意義があります。

本プロジェクトのメンバーのひとり福田樹生さんと、JAPI事務局 留学生サポート部 部長 飯田 友希さんによる本取り組みについて報告します。
文責:岸磨貴子


 


◆報告:福田樹生(明治大学国際日本学部 岸ゼミ4年生)

「留学生にとって就職活動はとても大変」というゼミの仲間のソ・アヨンさん(韓国人留学生)の言葉からひとつのプロジェクトがはじまりました。それが、Video Regime(ビデオ履歴書)のプロジェクトのはじまりです。アヨンさんによると「日本の就活文化は独特で、企業に自分がどんな人物かを十分に伝えることがなかなかできない。」という現状があるということでした。ちょうどその頃、留学生の就職支援をされている日本国際化推進協会JAPIの飯田友希さんと出会い、この課題解決にむけて、自分たちにできる具体的なアクションについて考え始めました。JAPIと明治大学の学生の間で何度も意見交換する中で、外国人人材/留学生が自分の言葉で、日本の企業に自分の魅力を語れるようにあることが重要であるということがわかり、そこの目的をおいたプロジェクトに取り組むことになりした。

私たちが着目したのは、海外の一部の企業で活用されている「ビデオ履歴書」でした。自分自身を語るということは、自分が誰か、どうありたいのか/なりたいのかについての意味を構築することです。ストーリーテリングの実践研究の知見を土台に、私たちは、外国人人材/留学生が自分自身について言語化していくことを通して、自分自身についての理解と表現を促進することを目的としました。

制作したビデオ履歴書は、企業側が視聴しやすいように1分程度としました。制作のプロセスは、まさに異文化間協働でした。明治大学の岸ゼミの学生とJAPIの海外拠点である、ミャンマー、ベトナム、インドネシアと連携し、実際にオンライン上で会話し、会話を通して彼らの魅力や強みを「共に言語化しながら創造し」それを、映像という形でまとめていきました。

具体的な事例として、最初に取り組んだミャンマーのヌイさんとのビデオ履歴書の取り組みを紹介します。ヌイさんと僕たちは、映像制作のプロセスで何度も会話を重ねました。僕たちも、そしてヌイさんも、個人について、文化について、歴史について、多様な観点から多くの気付きがありました。ヌイさんはこのプロジェクトを通して「資格を持つことやどんな実績を持っているかだけではなく、自分がどんな人であるかを相手に伝えることだ」と振り返っていました。

ミャンマーのヌイさんとの実践後、インドネシアとベトナムとの連携へと発展しました。新型コロナの影響もあり、それぞれの予定が合わなくなってしまったことから、オンラインでの異文化間協働は途中で終了してしまいましたが、オンライン中心の大学生活が始まる前にオンラインでの異文化間協働は、プロジェクトに関わるそれぞれにとって良い経験となりました。ビデオ履歴書は、大学と企業、日本と海外など文化や組織を超えての異文化間協働の実践でした。実践の面白さ、魅力を感じた一方で、オンライン上での異文化間協働の困難さも実感しました。たとえば、オンライン上で異文化間協働を行う上で「効果的・効率的」に行うだけではなく、文化を楽しむ/遊ぶ部分が必要だということがわかりました。価値観、時間の感覚、進め方、好きなもの、楽しいと感じることなどが異文化間で異なります。「自分のやり方」だけで進めては異文化間協働はうまくいきません。「好きな食べ物は?」など雑談など文化を楽しむ/遊ぶ部分ーいわゆる無駄話などを含めながら、お互いを時間をかけて知っていき、お互いが気持ちよく協働できる関係性を作っていく必要がわかりました。

また、異文化という点において、大学と企業の連携からも多くを学びました。プロジェクトマネージメントの観点から学生ならではの弱さー特にモチベーションの維持の問題に直面しました。学生感覚、社会人の感覚の違い、学生だから、社会人だからという勝手な思い込みなどもあり、こういったことも含めて協働の際にはコミュニケーションをしっかりとりながらお互いの状況を確認しながら、お互いがお互いのモチベーションになるように進めていくことが重要だとわかりました。
 
オンラインでの異文化間協働の実践ービデオ履歴書プロジェクトの経験を通して、今後、ますますオンライン化が進む社会において、一つの”共同のあり方”の知見を共有することができたら幸いです。


◆報告:飯田 友希(JAPI事務局 留学生サポート部 部長)

JAPIの飯田です。約2年間、企業側のコーディネーターとして明治大学の本プロジェクトの活動、見守らせていただきました。JAPIの海外拠点のスタッフや日本が大好きな現地の学生と交流してもらうことを通して、岸ゼミの学生のみなさんに「異文化理解のおもしろさと難しさ」を体感していただけたのではないかと思います。JAPIが関わってきた外国人学生にも、日本人学生とリモートで対話しながらプロジェクトを進めるという貴重な経験をしていただくことができました。私自身も、国を越えた学生・スタッフ間との調整の難しさとやりがいを感じることができました。

新型コロナウイルスによって、国を越えた直接的なコミュニケーションが難しくなっている中で、本プロジェクトで生まれた成果や課題は、今後の社会に大きなインパクトを与えられるものであると思います。
 本活動が、参加学生や本ページを見ているみなさんの今後のくらしやキャリアに活かされれば嬉しいです。岸先生、たつきくん、アヨンさん、そして本プロジェクトに関わってくださった全ての皆さんに感謝します。


◆報告:佐藤 晶(JAPIミャンマー拠点責任者)

ミャンマー担当の佐藤です。その節は本プロジェクトの第一弾として弊社ミャンマー人スタッフを取り上げていただき感謝しております。ミャンマーという国自体の認知度が低い中で、こうして「まずは知ってもらう」機会が出来た事で大変意義のある取り組みだったと思います。取り組んでいらっしゃった学生の皆様も、ミャンマーの参加者も本プロジェクトを通じてより異文化理解というテーマについて考える引き出しが増えた事でしょう。今後もそのような形で日本の若者と海外の若者が交流する場が増えていくことを願っております。


◆報告:Nway-htwe Thu(ミャンマー在住)

ちょうど大学の卒業式から1年経った時、同じ大学でミャンマー語を学んでいた日本人と、先輩の繋がりでこのプロジェクトに参加しました。自己PRのコンセプトが初耳だった私にとって、とても有意義な時間を過ごすことができました。

自分の動画作成が完了した後も、明治大学の学生であるアヨンさん、たつきくんと一緒にプロジェクトを進めました。自分と同じく日本の就職を目指しているインドネシア人やベトナム人の子達との話し合いを通して、日本の就職活動の自己PRや志望動機などは世界とは違って特別であることを改めて感じました。また、プロジェクトの企画に関わったことで、アヨンさんがこのプロジェクトをやりたいと思った理由が分かるようになってきました。就職活動文化の違いや日本語能力の不足が原因で、なかなか面接に受からない留学や日本語学習者たちの力になりたいと思うようになりました。自分が参加した時もアヨンさんとたつきくんはそのような思いでサポートしてくれたのだろうと思います。

日本語を4年間勉強しても、会話ができる自信さえ無かった私が、同じ歳の日本人と韓国人と楽しく会話ができるようになりました。
年齢が近いからこそありのままの自分でいられ、皆日本が好きだから文化が違くても分かり合える点が多かったように感じます。
1か月をかけて、毎週1時間彼らと話し合った会話から、自分も気づかなかった色々な個性や長所、短所などを彼らは分析してくれました。結果的に、日本語会話の練習が目的で参加したこのプロジェクトは、私の中の大事な何かを探し出してくれました。20代で自分のことを100%分かると言える若者は多分いないでしょう。だからこそ普段とは違う視線や考え方で自分のアピールポイントを探す国際交流はとてもよいアイデアだと感じました。


◆連携団体の詳細はこちら

日本国際化推進協会(JAPI)について

JAPIは、現役留学生支援、帰国留学生支援、留学生の実態調査・カンファレンス実施を行っている一般社団法人です。全国各地の大学での留学生向けガイダンスや、メディアを通した外国人留学生のキャリア支援を中心に事業を展開しています。
ウェブサイト:http://japi.or.jp

◆コーディネーター
飯田 友希(JAPI事務局 留学生サポート部 部長)

◆本プロジェクトにおける現地サポーター
・佐藤 晶(JAPIミャンマー拠点責任者)
・仁井 ひな(JAPI インドネシア拠点責任者)
・阿部 將大(JAPI ベトナム拠点 元責任者)