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国際日本学部

岸ゼミボードゲーム教材開発チームの企業連携ーSDGsワークショップの実践

2021年11月04日
明治大学 国際日本学部

岸ゼミ4期生は、ボードゲーム教材開発を行なっています。共生、他者理解、就職活動、世代間交流、異文化コミュニケーションなど様々な社会の課題に対して、「遊び」を通して「学び合う」デザインの場づくり/活動づくりに取り組んでいます。

そのひとつ、探究学習をテーマとしてボードゲーム教材を開発するチーム(稲田優菜、山下汐莉、髙橋柚夏、清永 早紀子)は、教材開発のプロセスにおいて、探究学習に力をいれている都内の高校を訪問して探究の授業視察や教師へのインタビューを行なったり、探究の教育支援をしている企業へのヒアリングを行なってきました。そこでつながりが生まれた企業株式会社ツナグラボ(本社:京都)が、本学部で「SDGs de 地域創生」のワークショップを実施してくださることになりました。

以下、本企画に取り組んだ学生およびボードゲーム開発に取り組む院生、参加者、そして、SDGsワークショップを実施くださった中西 將之さん(株式会社ツナグラボ)の報告です。
文責:岸磨貴子
 
稲田優菜(国際日本学部3年/岸ゼミ)
<本ゲームで経験したこと>
本ワークショップを通して、「対話をすることの大切さ」「効果的な学習のサイクル」を学びました。このゲームでは、参加者のチームワークとリーダーシップが求められており、自分の意見を一方的に主張するのでは解決策を導くことができません。相手が何をしたいのかを理解し、全体最適を模索するために「対話」が重要であるということを再認識できました。

<自分の研究に活かしたいこと>
私たちは、現在ボードゲーム教材を開発しています。このゲームのように、インプットとアウトプットをバランスよく経験できるデザインが必要だと思いました。私たちが開発したボードゲームを経験するであろう子どもたちが対話的に、深く学べるようにしていきたいと思いました。

清永 早紀子(国際日本学部3年/岸ゼミ)
私たちは「当たり前なんてないことを実感して欲しい」という願いからボードゲーム教材の開発を始めました。ところが、教材開発の道は険しく、多くの課題に直面しました。たとえば、ボードゲーム教材は、本来は楽しみながら対話的な学びができるメディアです。しかし、実際には、「こうあるべき」「◯◯はこうだ」といった固定概念に私自身が囚われてしまい、正解を求めてしまうゲームになってしまっていました。そこで、私たちは、学校現場の先生やゲーム教材を使った研修をされている企業の方にインタビューをさせていただき、日常生活の素朴な疑問から発想し、他者との対話によって正解のない自由な世界を探求する面白さに気がつきました。教材開発のプロセスにおいて、私たちはその制作者として多くのことを学んでいます。そして、私たちが学んだことをしっかり教材として形にし、その教材を使った人が、探求し新しい価値観に出会うという輪を広げれるよう、今後も取り組んでいきます。

山下汐莉(国際日本学部3年/岸ゼミ)
<本ゲームで経験したこと>
このワークショップを通して、対話の重要性を実感しました。みんなで課題解決や目標達成を目指すときは、同じビジョンを共有するだけでなく、個々の価値観やビジョンが異なることを踏まえつつ、目標達成へのプロセスを、対話ですり合わせることが重要だと思いました。

<自分の研究に活かしたいこと>
現在開発中のゲーム教材には、街づくりに関するグループディスカッションが起こるようにデザインしています。本ゲームのように、一人ひとりの多様な意見やその伝え方、受け取り方など対話の姿勢にも焦点をあてつつ、全体が大きなビジョンに向けてそれを実現するための対話を始められるようにしたいと思いました。実際に、それは難しいことですが、ゲームは、その大切さや具体的な行動に自ら気付く機会を提供するため、私たちのゲーム教材の完成に向けて引き続き頑張りたいと思います。

髙橋柚夏(国際日本学部3年/岸ゼミ)
<本ゲームで経験したこと>
本ワークショップを通して、ゲーム教材体験後の振り返りの重要性を再認識しました。ゲームをただ「楽しかった」というところで終えるのではなく、ゲーム中に起きた出来事の「なぜ」というところまで考えることによって、新たな学びが生まれることが分かりました。

<自分の研究に活かしたいこと>
ゲーム教材を作成する上で、ゲームを完成させることについ注力しがちでしたが、ゲーム体験者の価値観に訴えかけ、気づきを与え、何か行動を起こすきっかけになるような振り返りのプロセスを踏むことのできる教材を作成したいと思いました。

山内竜(国際日本学部3年/岸ゼミ)
SDGs de 地方創生のワークショップでは、教材ゲームに多様な形態の学びを取り入れる重要性を学びました。私自身、ゼミで教材開発に関わっていますが、教材ゲームには「これを学ぶことがゴール」という具体的且つ固定的な方針があるべきだと考えていました。しかし、SDGs de地方創生にはそうした目標はなく、むしろ参加者それぞれが他者との対話や社会についての多角的な思考を通じて、自ら学びを見出すことができるのだと気づきました。本教材のこうした特性を基に、今後のゼミ活動で、私は学びの多様性を引き出せる教材を作ろうと思いました。


柴田恒(国際日本学研究科 多文化共生・異文化間教育研究領域 M1)
<本ゲームで経験したこと>
今回、『SDGs de 地方創生』を体験させていただきました。各参加者が街を構成する一員となり、個人の目標と社会の目標の双方を達成することを目指してロールプレイするゲームでした。本ゲームを通して最も学びにつながった点は「擬似体験(シミュレーション)を通して考える」という体験でした。SDGsの17のゴールを達成するためには具体的にどのような政策や町内での連携が必要なのかを実際に体感することで、構造的な問題を可視化することができ、振り返りでは様々な対話が生まれていきました。特に振り返りでは「どうすれば良かったんだろう」という対話が自然に促され、各参加者が行った自らの行動を内省する場面が多くみられました。SDGs de 地方創生には「ゲームだからできる体験や得られる学び」が含まれていました。いつもと違う役割を演じる(ロールプレイする)中で異なる立場に立つ経験や、失敗したとしても失敗から対話が生まれる場面など、ゲームという媒体を使った学習だからこその体験ができたように思いました。

<自分の研究に活かしたいこと>
現在、自分自身も「ゲームを使った他者理解」に関する研究を行っています。具体的には、協働を通した1人ひとりの個性を生かす学校教育の実現に向けて、個人の持つ多様な価値観や考え方に触れ理解していくためのゲームを開発しています。今回のSDGs de 地方創生も自分が今開発しているゲーム教材も「対話」が重要な役割を担うように思います。それぞれの人が持っている異なる視点や価値観に気づくための「対話」という仕掛けを今後開発する中で意識していきたいと思います。

中西 將之さん(株式会社ツナグラボ)
この度はSDGs de 地方創生カードゲームワークショップの機会を頂き、ありがとうございました。今年の6月ごろにHPからお問い合わせを頂き、教材開発を通して社会課題の解決を目指しておられるとお聞きしまして、オンラインで打ち合わせをさせて頂きました。
学生の皆さんがコロナ下のなかでも、前向きにそして積極的に学びに取り組まれている姿勢に心打たれまして、また地方創生をテーマにされているとのことで、今回のワークショップを企画をご提案させて頂きました。このゲームは、地域に住む市民と行政に分かれてプレイするものです。ゲームが進むにつれて若年人口が徐々に減っていくなかで、市民と行政がどのように「協働」すればよいか、また「分断」と「対話」がどのようにして生まれるのか、という気づきや学びをゲーム体験を通じて得ていただけたのではないかと思います。ゲーム型の教育コンテンツは色々とありますが、このカードゲームは「講義」「議論・対話」「行動」「観察」の4つの学習スタイルをミックスした形で短時間で提供できるものです。そして振り返りを通して、「結果」を変えるために「人の価値観や考え方」に働きかけ、「自分ごと」にしてもらえる効果があると思っています。みなさんの学びや、これからの教材づくりに少しでもお役立ちできていましたら幸いです。ありがとうございました。