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情報コミュニケーション
学部

【情コミ・髙橋ゼミ】シンガポールとマレーシアで都市開発に関する海外実習を実施しました

2023年03月29日
明治大学 情報コミュニケーション学部

ダンガベイの高層コンドミニアム群ダンガベイの高層コンドミニアム群

閑散としたショッピングモール閑散としたショッピングモール

ジョホールバルの国際会議場にてジョホールバルの国際会議場にて

 情報コミュニケーション学部・髙橋華生子ゼミナールは、アジア地域における都市開発・計画の現状を学ぶため、2023年2月21日から28日にかけて、シンガポールとマレーシアで海外実習をおこないました。本実習の大きな目的の一つが、マレーシア・ジョホール州における開発事業の進捗を確認すること。ジョホール州は、世界に名立たるグローバル都市のシンガポールに隣接していることから、近年、その都市景観が劇的に変化しているところです。2006年に始まった一大開発プロジェクト「イスカンダル計画」の下、州都のジョホールバルの再開発だけでなく、その周辺や郊外の開発が大々的に進められています。

 そこでの開発の特徴は、投資家や事業家といったハイエンドな層の呼び込みを狙った、近代的な都市空間を作り上げていることになります。ジョホールバル近郊のダンガベイや州内第2の都市として期待されているイスカンダル・プテリでは、さながらバベルの塔のようにそびえ立つ高層コンドミニアムが次々と建設され、それに付随する商業・娯楽施設などの消費空間が創出されています。

 しかしながら、現場を訪れてみると、豪華な外観の裏で発生している数々の問題が見えてきました。最大の課題は、地元社会から断絶された空間になっていること。たとえば、コンドミニアムに併設された瀟洒なショッピングモールは、多くのテナントが撤退し、ほとんどが空き状態のまま放置されているため、利用する人もまばらで、ゴーストタウンのような廃墟の空気が漂っていました。
 また、新興開発地へのインフラ整備も追い付いておらず、交通手段を見つけるのも苦労の連続でした。電車やバスが縦横無尽に走っているわけでなく、タクシーといった移動手段もほぼ見当たらない。バス停を見つけ、そこに行くための歩道を探し出すことも容易ではなく、たった4秒で赤に変わってしまう信号にも遭遇しました。高温多湿の街を、皆で励まし合いながら歩き続けたことは忘れられない思い出です。

 実際に自分の足を使って体感することで、歩行者への配慮に欠け、自動車ベースの富裕層に特化した開発が優先されている、こうした現実を直に理解することができました。以上の問題点は渡航前の座学でも分かっていたことでしたが、現地での実習を通して、地元の人びとにとって有用な開発とは何なのかを改めて考えさせられました。
 2026年には、ジョホールバルとシンガポールのウッドランズをわずか6分でつなぐ鉄道の完成が予定されています。5年後、そして10年後、今回視察したジョホール州の開発がどのような展開を見せているのか、地元住民の生活向上に資する開発になっているのか。そうした点について、今後も注視していきたいと思います。


髙橋華生子ゼミナール