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国際日本学部

国際日本学部山脇ゼミが中野区長と外国人住民の懇談会を開きました

2020年07月10日
明治大学 中野教務事務室

参加者の集合写真参加者の集合写真

登壇者の皆さん(左端上が酒井区長)登壇者の皆さん(左端上が酒井区長)

国際日本学部山脇ゼミは、7月1日に中野区長と外国人住民の懇談会「コロナから考える緊急時の外国人住民への対応」を開催しました。中野区長と外国人留学生の懇談会はこれまで5回開催されてきましたが、中野区長と外国人住民の懇談会は、2014年以来、2回目となります。これまでの懇談会は、すべて対面形式で行ってきましたが、今回は初めてオンラインでの開催となりました。

*プログラムはこちらです。

登壇者として、韓国、中国、米国、シリア、日本出身の外国人住民と日本人住民あわせて8名(うち中野区民4名)と酒井直人中野区長が参加し、山脇啓造教授が進行を務めました。学内外から、ゼミ生も含めると、参加者は総勢約100名となりました。

討論に入る前に、外国人住民がコロナに関してどんなことで困っているかを山脇ゼミがインターネットで行ったアンケート調査の報告があり、相談場所や経済的支援、病院の利用についての回答が多かったことが述べられました。

討論の前半では、登壇者から、留学生寮では緊急事態宣言が解除されてから一週間経っても、そのことを知らない学生がいた一方で、オンライン授業をしていた日本語学校では、解除翌日の授業で教員から解除のニュースについて知らされていたことが語られました。また、コロナウイルスについての情報源や相談できる場所がわからず不安だったという発言があり、特別定額給付金のオンライン申請における手続きの問題点も出されました。

その他、病気になった時や地震の時の体験も話し合いました。日本語をうまく話せない母親を持つ登壇者は、母親が一人で病院へ行ったとき、日本語が通じず病院から追い返されてしまい、それ以来、母親が診察を受ける際は付き添うか、電話での通訳を自らしていることが語られました。また、国民健康保険の変更手続きを区役所で行った際に十分な情報が得られなかった体験も語られました。避難所がわからないといった地震発生時の不安の声もあがりました。

酒井区長からは、コロナの相談については、24時間のコールセンターがあり、基本的にはそこに相談してほしいが日本語での対応になること、一方、区役所窓口ではタブレットを使った多言語通訳の対応が可能であるというコメントがありました。また、外国人のコロナ禍での不安を解消するには、やさしい日本語の活用も含めて、もう少し分かりやすい情報提供に努めたいとのことでした。特別定額給付金のオンライン受付は、日本のオンラインのシステムがまだ発展途上のため、区役所にとっては、事務負担が大きいとの率直なコメントもありました。

後半の質疑の時間には、東京都の担当者から、東京都外国人新型コロナ生活センター(TOCOS)の14言語での電話相談の紹介がありました。また、山脇ゼミ生からは、やさしい日本語を使って国民健康保険の加入手続きの動画を制作したことが紹介されました。法務省がやさしい日本語のガイドライン策定の準備を進めていることも紹介されました。

懇談会の最後に、酒井区長から、コロナや特別定額給付金など経済支援策の情報についてはできるかぎり多言語化ややさしい日本語化に努めていきたい、外国人住民に健康保険の種類についてきちんと説明するニーズがあることにも気付き、今回の懇談会で外国人住民への対応において新たな課題が発見できたとの総括がありました。

こうして、今回の懇談会は、中野区民と区や都庁の職員、日本語学校、NPO、高校生など様々な立場の方の参加があり、外国人住民が増加している現状で、コロナ禍で困っていること、また緊急時の課題について、有意義な意見交換の場となりました。

懇談会の企画運営を担当した3年ゼミ生の感想は以下の通りです。

「懇談会の準備にあたって、企画、当日の運営の仕方、外部の人との連絡を同時進行で行うことがとても大変だった。懇談会当日は、オンラインではあったが、登壇者同士また参加者との意見交換を活発に行えたので、対面に近いイベントになったのではないかと思う。この企画運営を今後のゼミ活動に活かしていきたい。」(太田菜月)

「初めてのオンライン開催だったので、不安もあったが、みんなのサポートと活発な議論のおかげで、今回のテーマであった緊急時の対応に関して区長や留学生を含む外国人の皆様と話すことが出来てとても貴重な機会だった。特に今年はコロナウイルスの影響で、困難を経験している人々が多いが、このような状況下で、外国人住民にとって一番の悩みが情報の無さであることを知ることができた。これを基にこれからのゼミ活動では、多文化共生をテーマに情報を発信するだけで終わるのではなく、より多くの人に情報を届けるような工夫もしていきたい。」(鄭惺録)

「今回は初のオンライン開催という事で、正直不安な点も多かったが、当日は区長に、対面で行うのと変わらなかったと仰って頂けるほど、登壇者の方々による積極的な意見交換、体験の共有が行われ、安心した。自分達では気づけない生の声や、今後のゼミの活動に繋がる意見を聞ける良い機会となったので、ぜひ来年以降も実施して欲しいと思う。今回の貴重な経験を活かし、これからも多文化共生のまちづくりに向き合って行きたい。」(木村彩裕)

「今回はオンラインというイレギュラーな状況で、多くの外国人住民の声を集める必要があり、とても苦労した。しかし沢山の方々の協力で、幅広い世代や国籍の方からご意見を頂け、それをもとに有意義な懇談会を開催できたと思う。外国人のなかでも、コミュニティ次第で情報格差があることを知り、これからはどのように全ての人に情報を伝えていくのかが課題だと感じた。今後この課題を、ゼミの活動を通してどのように工夫し、改善していけるか考えていきたい。」(塚田百音)

「オンライン開催ではあったが、コロナウイルスで困っていることや、そこから浮かびあがる緊急時の対応策など、この状況だからこその問題を議題にして、意見交換の場を開くことができ、非常に多くの気づきや学びがあった。この懇談会が少しでもコロナ禍での外国人住民の方々の悩みや不安を解消でき、行政の緊急時対応のための情報源の役に立ててもらえたら、とてもうれしい。」(鋤柄唯)

※登壇者一覧(敬称略)
禹秀彬(韓国、イーストウエスト日本語学校、中野区在住)
関嘉煒(中国、中野区在住)
ラーマ・ジャマール・アルディーン(シリア、国際日本学部)
鄭惺録(韓国、国際日本学部)
シンディー・ユー(アメリカ、国際日本学部)
赵新萌(中国、イーストウエスト日本語学校、中野区在住)
大塚桂樹(日本、中野区在住)
塚田百音(日本、国際日本学部)
酒井直人区長
山脇啓造教授
(国際日本学部3年鋤柄唯)