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国際日本学部

国際日本学部山脇ゼミが第10回中野区長と留学生の懇談会を開催しました

2023年07月31日
明治大学 国際日本学部

国際日本学部の山脇ゼミは、7月5日に中野区長と留学生の懇談会「多文化共生のまちづくりと基本方針」を開催しました。10回目となる今回の懇談会では、中国、台湾、韓国、スイス出身の留学生と日本人学生の6名、そして酒井直人中野区長に登壇していただきました。進行は山脇啓造教授が務め、参加者はゼミ生も含めると、学内外から総勢約100名となりました。登壇者は中野キャンパスにて対面で懇談会を行い、会場に来賓及び聴講者を迎えるとともに、その様子をZoomで配信するハイブリッド形式で行いました。

プログラムはこちらです。登壇した学生は以下のとおりです。

ソン・スヨン(明治大学、韓国)、チョウ・サンセン(明治大学、台湾)、エイミス・ノア(明治大学、スイス)、チョウ・シジュン(イーストウエスト日本語学校、中国)、オウ・コウリン(イーストウエスト日本語学校、中国)、森遥奈(明治大学、日本)

来賓は中野区国際交流協会常務理事の白土純さん、同事務局長の瀬田敏幸さん、アクラス日本語教育研究所代表理事の嶋田和子さん、中野秘密基地代表の山本真梨子さん、中野区区民部文化・産業振興担当部長の高村和哉さんです。

懇談会の冒頭に、ゼミ生から23区を中心に都内自治体の多文化共生施策に関する調査報告が行われました[ 調査報告 ]。2023年3月に中野区の多文化共生基本方針が策定されたことから、多文化共生の指針や計画を策定しているかどうか、策定の際に有識者会議を設置したり、外国人住民の調査を行ったかなどの観点から各自治体の取り組みを比較しました。この調査では23区の過半数が多文化共生プランを策定していること、また、同じく23区の過半数が外国人住民向けのアンケート調査を実施していることがわかりました。その一方で、多文化共生プランの多言語版ややさしい日本語版はそれほど普及していないことが明らかになりました。そこで、私たちは中野区に対して、外国人住民対象のアンケート調査の実施と多文化共生プラン概要の多言語版の作成を提案しました。

パネル・ディスカッションでは、登壇した6人の学生から中野区多文化共生基本方針についての感想を聞き、中野区役所や区のホームページに関する意見交換を行いました。中野区在住の留学生からは「中野区の基本方針を読んで区の取り組みを初めて認識した」という感想や「外国人の立場でも参加できるイベントやボランティアをもっと増やしてほしい」という要望が出ました。

そのほか、近隣地域に住む留学生からは「中野区のHPについて自動翻訳の制度があまりよくないこと」や、「ホームページに掲載されている情報が多言語でも、リンク先のページが多言語対応していない」といった意見が出ました。それに対して酒井区長からは「自動翻訳であるため翻訳の制度は劣ってしまうが、今後Chat GPTを使った翻訳システムの導入を検討したい」との回答をいただきました。

懇談会後に実施したアンケートでいただいた感想を一部紹介させていただきます。「留学生が自分たちもボランティアしたいとおっしゃったことが、目からうろこでした。」「率直な意見が多く、とてもリアル感があり楽しかったです。」「今年も大変有意義で素晴らしい会になったと思います。年々、中野区の政策もより良いものにアップグレードされているように感じます。今後もぜひ続けていってください!」「この取り組みが長期間続いていることに敬意を表します。多くの方の意識と協力の賜物ですね。他自治体にも拡がるとよいと思いました。」

登壇した学生の感想は以下の通りです。

「懇談会に留学生として登壇する機会を得たことは非常に貴重な経験でした。私は留学生として、中野区での生活や仕事、日本語学習について直接的な経験を持っており、区役所における外国人対応の課題について発言する機会を与えていただきました。懇談会を通じて、私たち留学生の声が区長に届いたことを感じ、区役所の外国人対応の取り組みに対する期待感が高まりました。今回の懇談会が、より良いコミュニケーション環境の実現に向けた一歩となることを期待しています。また、懇談会を通じて、区長や関係者の方々が私たち留学生の意見を真摯に受け止めてくれたことを感じました。今後も留学生としての経験や意見を積極的に発信し、より良い留学生支援や外国人対応の環境づくりに貢献していきたいです。」(3年 ソン・スヨン)

「自分を含め、この懇談会が中野区内外の人たちにとって学びの機会になったことにやりがいを感じました。想像以上に懇談会を聴講してくださる方がいる中で、日本人でかつ中野区在住ではない登壇者としての自分の立ち位置に少し悩みましたが、事前準備もあったおかげで留学生の意見をきちんと聞き出すことができ、多くの人にとって懇談会が意義のあるものとなったようで安心しました。また、懇談会はただ話し合うだけではなく、地域の中での新たな繋がりを創出する場としても機能していることがわかりました。」(3年 森遥奈)

懇談会の企画運営を担当した学生の感想は以下の通りです。 

「懇談会担当メンバーと登壇者の方、先生、サポートデスクの方、ゼミ生の皆さんのおかけで懇談会を無事に終えることができ、心より感謝いたします。今回の懇談会では、多くの人と協力しあい、無事に開催できたという経験ができてとても嬉しかったです。ただ反省点もたくさんあるので、改善していきたいです。また、実際に留学生の生活に関する悩みなども聞くことができて、私自身も勉強になりました。普段は、ゆっくり時間をとって暮らしていて困ることを聞くことはなかったので、私にとってもとても有意義な時間となりました。懇談会を通して、実際に留学生が思うこと、そして区役所をどのようにより良くしていくか具体的なお話を聞くことができました。私たちにも解決のお手伝いができることもあると思うので、懇談会で学んだことを今後の活動に活かしていきたいです。」(3年 藤田千颯)

「今回の懇談会は14期生として初めての大きなプロジェクトでしたが、個人的に想像していたよりも風通しの良い意見交換の場になったことに驚きました。対面コミュニケーションを通して、留学生が感じていた違和感や課題など生の声を直接区長に届けることができ、また区長からそうした意見に対する現状出来る対策や、区のトップとしての見解をその場で聞くことができたため、非常にフレッシュかつ密度の高い議論でした。また、区長のお話によると来年から外国人総合相談窓口が開設されるということなので、それに伴ってどのように今回留学生から提示された課題が解決されていくのか、多言語翻訳タブレットの周知がされていくのか、多文化共生において革新的な一歩としての発展が期待されます。」(3年 滝瀬日葵)

「懇談会担当者として、司会の台本については事前に確認していましたが、当日のスライドやズームの操作が不十分で反省点はたくさん残りました。でも無事に懇談会を終えることができて良かったです。懇談会の内容としては、留学生から地域との関わりについて、直接意見を聞ける機会は普段なかなかないので、とても貴重な経験になりました。私が一番印象に残っているのは、クレジットカードの手続きの件で、5人の留学生のうち4人が日本でクレジットカードを発行できていないという事実に驚きました。発行できない理由が明確にあるのであれば納得ですが、当事者の留学生もなぜできないのか分からないという状況だったため、事情があるのであれば説明が必要だと思いました。また、外国人というだけで契約に対して不信感を抱いてしまうのであれば、そうした考え方は変えていくべきだと思います。外国人にも日本人にも様々な価値観の方がいるため、一度向き合ってみてその人個人で判断する必要性を感じました。」(3年 中塩千尋)

「留学生が日本での生活の中で感じる不自由さを学ぶことができました。多文化共生を謳う世の中にはなってきたものの、身近な区役所での手続きや、住居の確保やカード発行等における過程で海外から来た方には不要な壁がたくさんあることが分かったからです。また、以前に日本語学校を訪れた際、『区が様々な取り組みを催してくれていても、知る機会がなく、共に参加するのが同じ国からの留学生であるため勉強にならない』という話を聞き、今回のイベントを通じても取り組みとその宣伝を適切なバランスで行うこと、そして同世代の日本人との交流方法に課題を感じました。そして、近年性的マイノリティの方への賃貸業者の対応等で改善が求められていますが、今回のように海外から来た方に対しての対応も詰めていく必要を感じました。これからも今回の様な区長と直にお話ができる機会等を通じて、国籍や出身に関わらず誰もが快適に過ごせる中野区の実現に関わっていきたいと思いました。」(3年 西村結衣)

「留学生が直接区長に意見を言うことができる機会は大変貴重であり、この会が10回目を迎えたことは中野区の多文化共生社会を推進するうえで大きな意義があると思います。私たちでは想像できない新しい問題点や改善策が見えました。特に、各国で主流のSNSで発信するというアイデアは非常に興味深かったです。実際に直接話を聞く重要性を改めて実感しました。この懇談会が外国人住民を支援される側ではなく、地域社会の一員としてとらえていることが改めてよい点だと感じました。留学生の視点から政策を見直すことができ、それを区長に直接伝える機会はとても貴重であり、短時間でも多くの発見があった有意義な時間となりました。このような会が他の地域にも広がるとよいと思いました。この懇談会の開催が、中野区そして日本の多文化共生のまちづくりに良い影響を与えることを期待しています。」(3年 山本陽菜)

「今年の懇談会は、昨年に引き続き、ほぼぶっつけ本番で登壇してくださる区長や、事前に中野区のホームページを見たり庁舎に赴いたりして区の取組を調べ、当日たくさん意見を出してくれる留学生の皆さんと、事前準備から当日まで臨機応変に運営したゼミ生によって、大きなトラブルもなく終えることができました。懇談会の中で話題になった、留学生のクレジットカードの申請が通りにくいというというのは初めて知りました。懇談会を視聴していた大学院の友人からも『私のお母さん(外国人)も申請が通らなかった』と連絡があり、普段よく話していてもまだまだ知らないことはあるなと思うと同時に、懇談会のようにテーマを決めて話し合う場の必要性を再認識しました。また、懇談会には日本語学校関係者、大学職員、行政職員、卒業生などさまざまな人たちに参加していただき、会場は中野区の外国人住民に関わる人たちが集まり交流する場になっていると思いました。来年度はいよいよ中野区の新庁舎がオープンし、外国人総合相談窓口もできるそうなので、来年度の懇談会のテーマは、『外国人留学生から見た新庁舎』にするとよいかもしれません。」(国際日本学研究科2年 松野有香)

今回の懇談会では、中野区の多文化共生推進基本方針や多文化共生に関する取り組みが知られていないということがわかりました。その一方で留学生の多くが地域の人々と交流することを望んでおり、留学生が参加してみたいイベントの内容やイベントの情報提供をするSNSについて要望や意見を酒井区長に伝え話し合うことができました。2014年度に始まった区長と留学生の懇談会ですが、コロナ過でもオンライン開催に形を変え、ついに今年で10回目となりました。多文化共生のまちづくりに貢献できるよう、今後も開催を続けていきたいと思います。
(3年 野口愛琉)