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国際日本学部

山脇ゼミが株式会社メルカリとコラボし、中野区の職員研修でワークショップを担当しました

2022年08月09日
明治大学 中野教務事務室

山脇ゼミは、去年に引き続き2022年7月21日に中野区職員を対象とした多文化共生研修会の講師を担当しました。今回は、ウクライナ支援に力を入れている株式会社メルカリとコラボし、社内の「やさしいコミュニケーション」を推進するメルカリ言語教育チーム・やさしい日本語トレーナーの親松雅代さんにアドバイスをいただきながら、ワークショップを行いました。

当日は、山脇啓造教授から多文化共生について、株式会社メルカリの親松トレーナー からやさしい日本語についての講義をいただいた後、ゼミ生が「やさしい日本語コミュニケーション」のワークショップを行いました。計27名の職員の方にご参加いただきました。

「多文化共生のまちづくり」を研究テーマとする山脇ゼミでは、2018年度からやさしい日本語の普及活動をしています。やさしい日本語とは、誰にとってもわかりやすいように、尊敬語や謙譲語、熟語を避けて簡単に表記したり、話したりする日本語のことです。山脇ゼミは、豊島区で2020年12月、2021年12月に、中野区で2021年8月、2022年1月に、出入国在留管理庁と文化庁が策定した「在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン」(2020年8月)を参考に、やさしい日本語のワークショップを担当しました。今回のワークショップでも、ゼミ生が作成した練習問題を使用し、難しい日本語を簡単に言い換えていくロールプレイを行いました。

今回は、「やさしい日本語を完璧に使えるようになること」ではなく、「やさしい日本語を使う際のマインドセット(心構え)を身につけること」をゴールとしました。そのため、ワークショップの名前を「やさしい日本語」ワークショップから「やさしい日本語コミュニケーション」ワークショップに変更し、冒頭でやさしい日本語へのマインドセットを持つ大切さについての講義を行いました。

構成は、①導入(ゴールを示す)、②グループに分かれてロールプレイ、③まとめの3部構成です。導入では、ゴールを示すと共に、やさしい日本語が身近なものであることや、その必要性を伝えました。やさしい日本語はあくまでコミュニケーションの一手段であり、大切なのは単にやさしい日本語の話し方を覚えることではなく、相手とお互いに「歩み寄る気持ち」であることを強調しました。

ロールプレイでは、身近な場面(道案内やゴミ出し、災害対応)や、実際の区役所の業務内容に近い実践的な場面(国民健康保険の申請)を想定し、外国人住民役と日本人役に分かれて実践練習を行いました。実際に日本語を母語としないIrisさん(株式会社メルカリより参加)にもロールプレイに加わっていただき、リアルな声を伺うことができました。

参加した多くの方にやさしい日本語への関心を深めていただき、マインドセットを身につけるというゴールを達成することができたように思います。最後に行ったアンケートでは、「やさしい日本語を使った歩み寄りのコミュニケーションの大切さが理解できたか」という問いに対し、81.5%の方から「非常にそう思う」、残りの方から「そう思う」とご回答いただき、回答者全員から肯定的な評価をいただきました。

これまでにも山脇ゼミは、中野区の商店街や株式会社丸井グループの社員に向けて「やさしい日本語」のワークショップを開催してきており、自治体職員対象のワークショップは、2020年度の豊島区の研修から継続して担当させていただいています。2009年度から自治体と連携した活動を積み重ねてきた山脇ゼミが、自治体の信頼を得て、多文化共生研修を担当させていただいていることは意義深いものだと感じています。

やさしい日本語には絶対的な正解はなく、身近なコミュニケーション手段の1つです。日本語を「易しく」言い換えるテクニックはもちろん必要ですが、それ以上に相手に歩み寄り、分かりやすく伝えようとする「優しい」気持ちがとても重要になります。日々住民と接する自治体職員の方々が、「優しい」気持ちで積極的にコミュニケーションをとろうとする姿勢を見せることで、外国人住民はもちろん誰にとっても住みやすいまちづくりは促進されていくと考えます。この研修が、より多くの行政関係者に「やさしい日本語」が広まるきっかけとなり、優しさや思いやりに溢れた社会の実現へとつながっていけば嬉しいです。
(国際日本学部4年 土橋成実、松村有理惠)