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ドイツ語へのお誘い

商学部准教授 松原 有里
 
 みなさん、こんにちは。
 商学部のアカウンティング・コースで租税法を担当している松原有里です。私は明治大学に赴任する前に、5年余り、ドイツ語圏(正確にはドイツ語のよく通じる地域です)のヨーロッパで暮らしていました。今日は、私の眼からみたヨーロッパの言語と専門の勉強とのつながり、私の欧州での個人的体験、そして、日本の大学でドイツ語を勉強する意義を皆さんに少しお話したいと思います。

 まず、大学に入られた皆さんは、初習外国語を選択することになると思います。もしかして、今まで英語が苦手だった人(私もかつてはそうでした)には、「もう、これ以上、訳のわからない外国語をお経みたいに唱えて、知らない単語をいちいち辞書で引くのは嫌だなー」という気持ちがあるかもしれません。でも、受験のための語学の勉強と「実際に使うため」の語学の勉強は違うのです。もちろん、細かい文法や単語の知識も必要な時はありますが、本当の生きた外国語の勉強とは、「間違えて」覚えていくものです。もう皆さんは、自分が小さな子供だったときのことなど忘れているかもしれませんが、実は、母国語も皆そうやって習得しています。要は、最初から完璧をめざす必要などなく、何か自分の興味のあることに関連づけて学ぶこと、それが、語学にも専門にも共通する「良い勉強法」だと私は思います。

 さて、ドイツ語と専門教育のつながりなのですが、日本は19世紀後半の明治時代に国や社会の制度全般を作る際、当時の最先端を行っていた欧州からの影響を強く受けたため、社会科学系の学問の多くはドイツから輸入されたという事情があります。そのため、戦後日本の大学教育がアメリカ型に転換し、社会のシステムが大きく変化した今でも、日本の近代化のプロセスを深く知る際にはヨーロッパ言語の知識は不可欠なのです。

 あとは、私の個人的な体験談を少しお話します。私は、大学院時代に最初はオランダ、次にドイツ、最後にオーストリアの大学で勉強をしていましたが、オランダ人は、ドイツ語と英語の双方を理解し、外国(英独仏)のテレビや新聞記事を見ては「同じ事件でも解説の仕方が違う」とよく議論していました。外国語の達人になると、情報収集の機会が広がりバランスの取れた考え方ができるようになります。さらに、ドイツやオーストリアにいた時には、南欧や東欧の留学生たちとも知り合う機会があり(留学生は寮で共同生活をすることが多いのです)、ドイツ語圏だけでなく、それ以外の英語が通じない地域で暮らす人々の考え方や、歴史、食べ物を知るよい機会にもなりました。日本にいると殆ど知る機会のない地域からの留学生も沢山いましたから。(同時に、今の日本がどれだけ物質的に豊かかということにも気づかされます。欧州大陸に年中無休24時間営業のコンビニはないのです。駅のキオスクはありますが。)

 そういう意味で、皆さんには、まだ頭も耳も口も柔らかい時期に、初習外国語に果敢に挑戦することをお勧めします。何事もそうですが、若い時に習ったことはずっと覚えているものですし、これからの時代、皆さんが、将来、短期間でも外国で暮らしたり、外国人と一緒に働く可能性もあるかもしれませんからね。

 最後に、本学の提携留学先、イエナ大学について。旧東独に位置するため、日本ではあまり知られていませんが、歴史的には大学都市かつ光学ガラス産業の中心地として古くから栄えていた街です。東ベルリン同様、まだ復興途中の観は否めませんが、学生の多い街でそれなりに活気はあります。ゲーテもかつてここで医学を学んだそうですよ。