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ゲストスピーカーによる特別授業(6月2日実施)

実施日:2014年6月2日(月)
実施場所:駿河台キャンパス リバティタワー1012教室
科目名:意思決定会計論A
ゲストスピーカー:邊見 敏江((株)イトーヨーカ堂 元 常務取締役)

実施内容:
 6月2日の特別授業で㈱イトーヨーカ堂の元常務取締役・邊見敏江氏は「イトーヨーカ堂の中国事業-進出時の意思決定-」を講義された。講義は1994~97年において検討がなされたイトーヨーカ堂の中国への事業進出に関するものであった。邊見氏は同社の中国進出時の意思決定に大きく関与した人物である。
 1994年,中国糖業酒類集団公司等と合弁会社を設立する形で北京市に進出するよう打診されたイトーヨーカ堂は様々な交渉を行ない,1997年に華糖ヨーカ堂を設立した。同時期に成都市でも交渉も進めており,1996年成都イトーヨーカ堂を設立している。この2社は中国国外の外資系小売業者と比較し,店舗数こそ劣っているが,1店舗当たりの売上高では他を圧倒している。邊見氏はこの中国におけるイトーヨーカ堂の強さは,同社が個々の店舗を強くしようとした結果であり,そのために日本で培ってきた経営ノウハウが経営環境に合うよう,この合弁会社2社に移転されたと説明した。
 邊見氏はその経営ノウハウは合弁相手との「契約」を交わす際に織り込まれたと述べている。例えば,店舗を設計する会社の選定方法,登録資本金を決定する方法,現物出資される土地使用権の評価等である。さらに,合弁会社に対するライセンス契約(技術導入契約)にも細心の注意が払われたと話された。そして,こういった内容の契約締結には合弁相手の小売業に対する深い理解が必要だが,まだ近代的な大規模流通業が発達していなかった当時の中国においては,それを啓蒙する必要があり,イトーヨーカ堂が中国におけるその普及に貢献したと付け加えた。
 今回の特別授業では私語が無く,皆,真剣な眼差しで投影されたスライドを見たり,邊見氏が話した内容を必死に書き留めたり,講義後,邊見氏に質問したりする等,非常に良好な雰囲気の中で実施をすることができた。中国における日本企業の進出時の意思決定の実務をその中枢にいた人物から学んで,受講者の知見を大いに深めることができたという意味で,この特別授業は非常に意義深いものであったと考えられる。


                                                        前田  陽(科目担当教員)