Go Forward

ゲストスピーカーによる特別授業(6月9日実施)

実施日: 2017年6月9日(金)15:20~17:00
実施場所: 駿河台キャンパス 1114教室
科目名: バイオテクノロジーとバイオビジネス
テーマ: 遺伝子組換えカイコを用いた組換えタンパク質の生産
ゲストスピーカー: 冨田 正浩 氏((株)免疫生物研究所・取締役・遺伝子組換えカイコ事業部長)
実施内容:
 株式会社免疫生物研究所で遺伝子組換えカイコ事業部長をされている冨田正浩博士に「遺伝子組換えカイコを用いた組換えタンパク質の生産」というテーマで、特別授業をしていただいた。
 カイコは家畜化された昆虫で、ほとんど動けないので逃げ出すことがない。従って、環境への影響のリスクはほとんどない。また、真核生物であり、遺伝子組換え技術によってヒトの遺伝子を導入すれば、糖鎖も付いた複合タンパク質も生産できるという特徴がある。さらに、カイコはまゆを作るので、その糸に組換えタンパク質を発現させるようにすれば、抽出・精製が容易で、しかも高純度のものが得られると期待できる。カイコの糸はセリシンとフィブロインという2種類のタンパク質から成り、内側のフィブロインは難溶性だが、その外側にあるセリシンは高温の緩衝液に抽出される。そこで、ヒトの遺伝子をセリシン遺伝子のプロモーターに接続してベクターを設計し、トランスポゾンを利用して遺伝子を染色体に挿入することを試みた。このようにして冨田博士らは有用な遺伝子組換えカイコ(トランスジェニックカイコ)の作製に成功した。
 この技術を応用し、導入する遺伝子を変えれば、さまざまなタンパク質を低コストかつ高純度で生産できる工場として、カイコを利用できる。授業では、研究用試薬・診断薬用の抗体、化粧品用ヒトコラーゲン、動物用医薬品原料としてのタンパク質や、ヒト医薬品候補としてのタンパク質などの例について、丁寧にわかりやすく説明していただいた。

浅賀 宏昭(科目担当教員)