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ゲストスピーカーによる特別授業(10月26日実施)

実施日: 2017年10月26日(木)15:20~17:00
実施場所: 和泉キャンパス 3番 教室
科目名: 心理学B
テーマ: 正義と公正の心理学
ゲストスピーカー: 大渕 憲一 氏 (放送大学・特任教授/宮城学習センター所長)
実施内容:
 2017年10月26日(木)、和泉キャンパスで木曜4時限目に開講されている心理学Bにおいて、放送大学特任教授/宮城学習センター所長の大渕憲一先生をゲストスピーカーとしてお迎えし、特別授業をご講義頂いた。講義のテーマは、「正義と公正の心理学」であった。講義では、正義・公正の心理学研究が始まる以前の正義・公正の歴史的解説から始まり、超越的正義から主観的公正研究に至る経緯が解説された。すなわち、かつては、正義や公正は、聖職者や特別な修練を積んだ特別な能力を持つ人にしか認識できず、議論することが出来ないとされていた「超越的正義」であった。それが時代が進むにつれ、民主化された市民社会が実現されると、どんな制度も法律も市民の正義感と合致したものでなければならないという主観的公正感が生まれた経緯が解説された。その中では、日本の裁判制度における陪審員制度の導入時の具体的な例やエピソードも披露された。受講生たちも興味を持って聞き入っており、現実に導入されている制度が、どのような正義・公正の歴史的背景に基づき、社会的意義を持つのかを学ぶことが出来たと思われる。その上で、「何が公正なのか」という公正判断、人が公正と感じる心理過程についての研究が紹介された。心理学における公正研究では、公正判断の仕組みとして、公正とは、個人や集団が、その資格条件に相応しい処遇を受けることであることが解説された。講義の中では、この公正判断の仕組みの多様性が紹介された。その中では、分野によって、公正判断の要素である“処遇/資格要件”が、“報酬/業績”の場合、“支援/ハンディキャップ”の場合、“救済/信仰心”の場合、“地位/出自”の場合、などが具体的例を用いて説明され、受講生の公正に関する理解が深められた。更に、公正の基準の要素である「処遇」における公正の基準が、集団の種類によって異なることが講義された。実力主義の企業では衡平基準、役所などでは平等基準、福祉団体では必要性基準、といった違いが解説された。この講義によって、受講生は、社会における公正が単一ではなく、それぞれの社会集団において何が正義で公正なのかが違うということを学ぶことが出来たと思われる。その意味でも、本特別講義は、これから社会に出る学生によって大変有意義な学習の機会であったと思われる。 

佐々木 美加(科目担当教員)