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ゲストスピーカーによる特別授業(6月24日実施)

1.実施日    
2020年6月24日(水)9:00~10:40

2.実施場所
和泉キャンパス 6番教室

3.科目名
日本語表現論A

4.テーマ
落語の実演

5.ゲストスピーカー
立川 がじら 氏 (落語 立川流 二つ目)

6.実施内容
 落語立川流の立川がじらさんより、落語の実演をしていただきました。
 オンライン授業なので、学生は、石出による話芸についての講義を視聴したのち、この授業のためにがじらさんに収録していただいた明大商学部生への挨拶メッセージと落語を視聴しました。挨拶メッセージでは、落語とはどのようなものであるかを簡潔に説明していただき、また、扇子や手ぬぐいの使い方をレクチャーされていました。落語では、本題に入る前のマクラでは、本題の時代背景などをさりげなく紹介し、本題の落語の理解を助けるような情報が伏線として入っていました。
 本題の噺は「千両みかん」でした。この噺は、30分を超える比較的長い話です。夏の盛りに床についてしまった商家の若旦那。どうも心の病らしいということで、幼いころからこの商家に奉公していて若旦那と仲良しの番頭が、大旦那に頼まれて、若旦那の病の原因を探りに行きます。すると、みかんが食べたいとのこと。「何、簡単なこと」と番頭は安請け合いしましたが、冷蔵庫のない昔のことで、真夏にみかんなどあるはずもありません。大旦那に「みかんを見つけてこないと磔だ」と言われ、番頭は必死の思いでみかんを探し回ります。いたるところで、「真夏にみかんがあるか」と怒られまくり、番頭はすっかり弱気になります。このあたりは滑稽でもあり、ペーソスが感じられる部分でもあります。最終的には、みかん問屋にひとつあったのですが、値段が千両とのこと。大旦那に報告したところ、倅の命と思えば安いものだと、金を与えて買ってこさせます。若旦那はそれを食べて元気を回復し、残った3房のみかんを番頭に渡し、これは両親と番頭で食べてほしいと言います。番頭は、みかん1個が千両ならば、この3房のみかんは300両にあたるのだなと考えます。若旦那の部屋から出た番頭は、そのまま行方知れずになりました。この話は、物の価値とは何かということを扱っており、商学部の学生には興味がわきやすい内容でした。ストーリー展開は現代に通じるものですが、使われる言葉がやや古くまた当時の商店における旦那、若旦那、番頭という設定などが現代の大学生にはわかりにくいことから、演じるには相当の力量が必要となります。しかし、がじら氏は言葉を選び、また現代の用語に置き換えるなどの工夫を行い、非常に分かりやすい落語に仕上げていました。
 演じられた噺は古典落語ではありますが、その中に現代風なアレンジがほどこされており、落語が現代にも根付いている話芸であることが実感できるものでした。学生が授業後に提出した文章を読むと、登場人物の演じ分け、間の取り方など、その高い技術に対して学生たちは驚きを隠せない様子でした。また、日常の話し言葉や、身振り手振りを使ったコミュニケーションにおいて、私たちも意識したほうがよい要素が数多く見られました。
 学生の感想の中には、「長い時間だったが、話に引きこまれ、飽きることがなかった。何もないのに、空間の様子が目に浮かぶようだった」など、演者の話術を体感したコメントが多くみられました。
 今回の実演は、落語というものが、話し言葉を使った高度な芸術であり、現代の日本文化に寄与しているということが実感できる有意義なものでした。

                                                                                                           石出 靖雄 (科目担当教員)