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6月24日(金)実施報告(木戸 理江氏【テーマ:水俣病】)

1.実施日    
2022年6月24日(金)10:50~12:30

2.実施場所
駿河台キャンパス 1096教室

3.科目名
企業と環境問題

4.テーマ
水俣病

5.ゲストスピーカー
木戸 理江 氏(JNC総務、水俣市議会議員)

6.実施内容

 JNC(旧チッソ)水俣工場の総務部で長らく工場見学を担当されてきた木戸理江氏にお越しいただいた。「今日は会社の代表としてではなく一個人として皆様とお話をするために来ました」と前置きをされ、前半は事前に送付した学生からの質問に答えながら話された。後半は活発な質疑応答があり、熱気のあふれる特別授業となった。

 学生からの質問は、JNCにとって水俣病の教訓は何でどう生かされているか、社内で水俣病問題はどう扱われているか、公害を起こした企業に勤めることに抵抗感や家族の反対はなかったのか、など多様であったが、一つ一つに丁寧に答えて下さった。

水俣病の経験をふまえて言えることとして、各種環境対策の徹底は当然であるのに加え、一度起こしてしまった過ちは将来にわたって償っていかないといけないこと、少しでも決断に迷ったら立ち止まる勇気を持つことが必要なこと等を挙げられた。

外部から訪れる工場見学者の多くが、見学担当の木戸さんに対して、犯罪者を問い詰めたり謝罪を求めるかのように振舞う、ということに対しては、学生たちは驚いた様子であったが、木戸さんは、あくまでも事実を知ってもらうことにつとめ、決して逃げないこと、ごまかさないで全力で向き合うことを信条にしてきたという。

一方、水俣市は今もJNCが主な企業であり、町ではJNCの従業員であることは安定を意味し、木戸さんは家族も当時のチッソの従業員であったこともあり、就職の際には周囲から喜ばれたという。

水俣市という人口2万人ほどの小さなコミュニティが、裁判となると加害者と被害者に分断されてしまうことの辛さについても触れられた。水俣病のことといえば、地元での加害者と被害者の対立ばかりが取り上げられるが、現実の暮らしの場面では必ずしもそうでないことを例に、マスコミの報道の偏りについて述べられた。昨年公開のハリウッド映画MINAMATAが、史実と異なる脚色が多いのに、真実に基づくと謳っていることがJNC関係者のみならず地元民の多くを傷つけたことも触れられた。

物事について、マスコミの報道を鵜呑みにせず自分で情報を収集して確かめること、自分の頭で判断することの大切さをメッセージとして語ってくださった。


森永 由紀(科目担当教員)