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11月14日(月)実施報告(立川がじら氏【テーマ:話芸の日本語表現】)

1.実施日    
2022年11月14日(月)10:50~12:30

2.実施場所
和泉ラーニングスクエア402

3.科目名
日本語表現論B

4.テーマ
「話芸の日本語表現」

5.ゲストスピーカー
立川がじら氏(落語立川流二つ目)

6.実施内容

 落語立川流の立川がじら氏より、落語の実演をしていただきました。

 明治大学落語研究会の部員2名が前座として古典落語を演じてくれたあと、立川がじら氏が2席の落語を続けて口演されました。部員の演じたのは「転失気」と「大工調べ」でした。今回演じてくれた落語研究会の部員のうちの1名は、本授業の履修者の1年生です。

 立川がじら氏は、まず古典から現代風までの小噺の面白さを紹介されました。立川流の創始者である立川談志氏がシュールな小噺を始めたことを紹介し、落語が古臭いものでないことを教示されました。そのあとで、古典落語の「親子酒」と「風呂敷」を熱演されました。

 「親子酒」は、商家の主人とその息子が酒を断つ約束をするが、それぞれに約束を破ってしまうという噺です。父親は、息子が酒でしくじらないように、自分も酒を辞めるから息子にも辞めるように約束をします。しかし、隠居状態で他に楽しみもない父親は我慢できません。少々ならば酔ったように見えないだろうと、ばれないように飲み始めますが、結局べろべろになってしまいます。「少々ならば」という考えや、酔っているくせに自分はしっかりしていると思っている様子は、現代にも通じる滑稽さが見られます。息子の方も外で飲んできてしまい愚かな言い訳をします。酔ったもの同士の滑稽な問答が見せ場です。がじら氏は、酔っ払いの特徴を捉えた言動を見事に演じていました。しかし、それは決して大げさでなく、聞き手が見入ってしまうような芸でした。

 「風呂敷」は、嫉妬深い夫が留守のところに、たまたま若い男がやってきて、せっかくだからと女房お茶を淹れていると、夫が帰ってきてしまうという場面が発端です。若い男がいるのを知ったら嫉妬深い夫は何をするかわからないと思った女房は、とっさに押し入れに若い男を隠します。家に入って来た夫は押し入れの前に座って酒を飲み始めてしまい、若い男は押し入れから出ることができません。女房が近所の「兄い」に相談に行き、「兄い」が風呂敷を使ってうまく若い男を逃がすという噺です。「兄い」の機転の利いた方法と、夫の間抜けなところが、笑いを誘います。がじら氏は従来のオチを変更して、より緊迫感のある終わり方になっていました。

 これら二席の落語の舞台は、現代と生活様式の異なる江戸から明治時代ですが、がじら氏は言葉を選び、また現代の用語に置き換えるなどの工夫を行い、非常に分かりやすい落語に仕上げていました。
 演じられた噺は古典落語ではありますが、その中に現代風なアレンジがほどこされており、落語が現代にも根付いている話芸であることが実感できるものでした。



石出靖雄(科目担当教員)