商学部の現場
商学部卒業生 西澤周平さんが在学中に執筆をはじめた論文が、保険分野の国際学術雑誌Asia-Pacific Journal of Risk and Insurance誌に掲載されました
2024年11月18日
明治大学 商学部事務室
商学部卒業生 西澤周平さんが在学中に卒業論文として執筆をはじめた論文“Cream Skimming and Technological Innovations in Automobile Insurance Market”が、商学部藤井陽一朗教授との共著で保険分野の国際学術雑誌Asia-Pacific Journal of Risk and Insurance誌(ABDC Journal Quality List: B)に掲載されました。
掲載ページ
https://www.degruyter.com/document/doi/10.1515/apjri-2024-0023/html
https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=4335238(どなたでも閲覧可能です)
西澤周平さんは、2018年に明治大学付属中野高等学校、2022年に明治大学商学部(ファイナンス&インシュアランスコース)を卒業し、2022年に開催された26th Asia-Pacific Risk and Insurance Association Annual Conferenceで“Cream Skimming and Technological Innovations in Insurance Market”のタイトルで口頭報告をおこなっています。その後、学会でのコメントなどをもとに商学部 中林真理子ゼミ、藤井陽一朗ゼミなどで追実験を実施しています。
学術誌名
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Asia-Pacific Journal of Risk and Insurance
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DOI
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10.1515/apjri-2024-0023
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論文名
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Cream Skimming and Technological Innovations in Automobile Insurance Market
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著者
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西澤周平、藤井陽一朗(商学部教授)
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論文概要
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日本をはじめ多くの国々で、テレマティクス機器を利用してスピードなどの走行データを収集し、ドライバーの自動車運転技術をスコア化して保険料を算定するPay-How-you-Drive(PHYD)自動車保険が販売されています。スコアに応じて保険料が変化することで、ドライバーに安全運転をうながし、事故件数の減少などにつながることが期待されています。一方で、いくつかの先行研究では、保険会社が事前に安全運転ができる低リスクのドライバーを選別することで大きな利益を生み出し、高リスクのドライバーを排除してしまう可能性が指摘されています。これは、いいとこ取りをあらわす「クリームスキミング」と呼ばれています。しかし、クリームスキミングが本当に生じるかどうかについてのエビデンスは十分に提供されていませんでした。そこで本研究では、実験経済学の手法を用いて実験データを収集し、PHYD自動車保険が市場にどのような影響を与えるのかを検証しています。実験では、被験者にさまざまな運転特性や事故を起こす可能性を仮想的に与えて、①運転スコアに応じて保険料が変動するPHYD自動車保険と②運転技術にかかわらず一律の保険料を支払う従来型自動車保険を選択してもらいました。実験の結果、PHYD自動車保険加入者の期待損失額は大きく低下し、従来型自動車保険の期待損失額と統計上有意な差があることが示されました。つまり、PHYD自動車保険を販売する保険会社は低リスクのドライバーを囲い込んでクリームスキミングが可能となる一方で、低リスクのドライバーが離脱した従来型自動車保険は加入者の事故リスクが高くなることで保険料が高額になることをあらわしています。さらに、高リスクのドライバーにとっては保険料が高くなり、市場から排除される可能性があることが分かりました。このように、政府による規制がない状況下でクリームスキミングが繰り返されると、残余市場の保険料が上昇し、高リスクのドライバーが保険に加入できず、事故の被害者に十分な補償がなされないために「市場の失敗」につながる可能性があることが明らかになりました。
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