中世ヨーロッパを主題として講義を行う授業です。中世ヨーロッパについては、文学や映画、ゲームなどを通じて、暗く野蛮な世界、あるいは幻想的・ファンタジー的な世界というイメージを持たれている方も多いかもしれません。この授業では、そうした一般的イメージを冷静に見つめ直すことができるよう、活気あふれる中世ヨーロッパの姿を様々な切り口から提示するようにしています。
基本的には、10世紀~15世紀頃にかけてのヨーロッパ文明の形成期が講義の主な対象です。毎年異なる具体的なテーマを設定しており、宮廷から都市まで、統治組織の構造から衣食住まで様々なトピックを扱いますが、いずれの場合もヨーロッパ世界の本質を細部から大掴みできるよう議論を工夫しているつもりです。2017年度は、グローバルな視点から中世世界を捉え返すべく、ヨーロッパと東方世界の間のモノや人の往来・交流、気候をはじめとする自然環境と政治や経済、文化のかかわりなどを論じました。近代世界の礎を築いた中世ヨーロッパの文明は、現代日本に生きる私たちの文明ともまったく無縁なものではありません。それと同時に、私たちには異質な、しかしそれゆえに私たち自身の姿を見つめ直させてくれる他社としての一面を持ちあわせてもいます。最終的に、こうした中世ヨーロッパ世界の二面的性格を理解してもらうのが、この授業の目的です。