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国際日本学研究科

大阪と都内ネパール人学校の学校間交流のアクションリサーチの実施

2022年05月30日
明治大学 国際日本学研究科

 多文化共生・異文化間教育研究領域所属の博士前期課程1年の田中真菜さんは、今年度から、大阪の小学校と都内にあるネパール人学校との異文化間交流学習の支援に関わっています。5月14日には、ネパール人学校で開校10周年を祝うセレモニーに参加し、大阪の小学生児童らとネパール人学校の先生とのオンライン・リアルタイムによる交流および手紙交換のための活動を支援しました。アクションリサーチを行う田中さんの報告です。

田中 真菜(多文化共生・異文化間教育学研究領域 博士前期課程1年)

私は、現在、アクションリサーチの方法を用いて、大阪の小学校と都内のネパール人学校の異文化交流学習の研究をしています。今回は、機会をいただき、東京都にあるネパール人学校であるエベレストインターナショナルスクールジャパン(EISJ)を訪れ、先生方、児童・生徒と関わることができました。

私は、まず、アクションリサーチャーとして子どもたちがいる現場に入り、まずは、児童が日々学ぶ学校、教室などの様子を撮影し、目についたものからノートにメモするなどして、児童が置かれている学習環境を理解するヒントを集めることを徹底しました。この学校(EISJ)は、日本にありながらも、一般的な日本の小学校とは異なっていました。例えば、学年ごとの教室の大きさや形が様々であること、複数の言語で書かれた掲示物があること、靴のまま学校内を移動すること、児童の持つカバンが多様であることなどから、外国の学校を見ているような印象を受けました。しかし、EISJの児童が、見知らぬ複数の日本人である明大生と学校内ですれ違う際は、特に驚く様子もなく、元気に日本語で挨拶をしてくれたことから、彼らが日本の社会の中で生活していることが思い起こされました。このような発見から、この学校の児童・生徒は、その多くがネパール人のコミュニティの中で生きており、特に、同世代の日本人の子どもたちと積極的に関わる機会は少ないものの、実際に日本で暮らしているということがよく分かりました。そして、EISJの児童と日本人児童が交流することは大きな意味を持つと実感しました。

さらに、学校間の交流学習に参加する上で、先生方と一緒により良い学びを作っていく者同士の関係を構築するために、先生・児童と積極的にコミュニケーションをとることを心掛けました。現場の中でのより良い学びづくりを目指すアクションリサーチャーは、先生・児童と良い関係を築き、自分の考えを自由に共有できる相手になることが重要です。そのため

に今回は、まず、関わる人たちの名前を覚え、名前での呼びかけを意識することをはじめ、相手が何をしたいと考えているかを引き出す質問を心掛けるなどして、良い聞き手になれるよう努力しました。

また、実際に児童らと関わることを通して、新しい発見も多くありました。例えば、多様な言語レベルにおけるコミュニケーションです。EISJの児童は、ネパール語、英語と、簡単な日本語を話すことができます。また授業も多言語で行われています。しかし、特に日本語のレベルは様々で、児童が受け取れる情報は異なる中で、彼らが複数の言語を使い分けながら自然にコミュニケーションを取っていました。さらに、日本人に向けて手紙を書く活動を行った際には、日本語が比較的得意な児童が日本語で手紙を書くと、日本語にあまり自信のない児童が影響を受け、漢字を書いてみようと挑戦する姿がありました。「ネパール人学校」とひとことで称しても、児童それぞれに異なるバックグラウンドがあることも伺え、彼らが持つ背景や特徴を越えて、協力しながら活動する様子から、共生することへの考えも深まりました。

今回の訪問で、開校記念のセレモニーや、交流活動の第一歩目の活動に参加することができ、自身の研究における新しい気づきがあっただけでなく、教育や異文化理解への興味関心の幅も広がる契機になりました。これからの交流学習においても、ひとりのアクションリサーチャーとして、先生・児童と一緒により良い学びを作っていく人として、現場に積極的に関わり合っていきたいです。
明治大学大学院