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国際日本学研究科

経団連、及び経団連の会員企業におけるダイバーシティ・インクルージョンの取り組みを聴きました(その1)

2022年07月20日
明治大学 大学院国際日本学研究科

経団連ソーシャル・コミュニケーション本部長正木義久氏経団連ソーシャル・コミュニケーション本部長正木義久氏

損保ジャパン取締役常務執行役員酒井香世子氏とともに損保ジャパン取締役常務執行役員酒井香世子氏とともに

 国際日本学研究科の多文化共生・異文化間教育研究(博士課程前期)では2021年度より春学期において、「企業とダイバーシティ」を開講しています。
本年度も企業におけるダイバーシティ・インクルージョンを推進する経団連のソーシャル・コミュニケーション本部の全面的な協力を得て、経団連事務局より同本部長の正木義久さん、会員企業より損保ジャパン株式会社取締役常務執行役員の酒井香世子さん、株式会社JERA執行役員(D&I担当)の藤家美奈子さん、JX金属株式会社ESG推進部副部長の野田麻由さんにご登壇いただきました。その模様を2回に分けて紹介します。
本年度の講義では、日本社会において喫緊の課題となっている女性の活躍促進に時間が割かれるかたちとなりました。世界経済フォーラムが2021年3月に公表したジェンダーギャップ指数(各国における男女格差を経済、政治、教育、健康の4分野のデータから作成、0が完全不平等、1が完全平等を示すもの)で日本は0.656と世界120位に甘んじています。その上位は欧州各国が占め、それらの国の値が0.8を超えていますから、日本は女性活躍という点では相当、水をあけられているといえます。
そうした情勢を踏まえ経団連の正木さんからは、経団連が行った「ポストコロナ時代を見据えたダイバーシティ&インクルージョン推進」に関するアンケート結果(2020年10月)を示していただきました。そのなかで「女性活躍を推進する上で見直しや導入が必要だと思う社会制度」として、家事支援税制(家事・育児代行サービス料の一部を税額控除する制度)の導入が最多であったこと、配偶者控除制度の見直しを求める声も多かったことなどが紹介され、アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)の克服が求められているとの説明がありました。
企業からのお話のトップバッターは、損保ジャパンの酒井さんでした。酒井さんは、全国勤務型の総合職として入社し、広島での営業や広報部門、内閣府男女共同参画局への出向を経験しながら、お二人のお子さんを育てられ、現在は取締役常務執行役員として最高人事責任者(CHRO)、サステナブル経営推進責任者(CSuO)を務められています。
酒井さんからは、会社としてダイバーシティ・インクルージョンの加速を社員に対してコミットし、多様な⼈材が強みを発揮しながら活躍するための制度づくり、⾵⼟づくりに注⼒していることを紹介いただきました。
具体的には、女性の活躍を促す施策を「働きやすさ」「働きがい」「ワークスタイルイノベーション」の三つのステップで進め、残されている課題には4つの処方箋を示して実践しているとのことでした。
その4つの処方箋は、(1)ネットワーク(女性役員とのラウンドテーブル、異業種交流会の開催など)、(2) 意識・マインド変⾰(アンコンシャスバイアス研修会の開催など)、(3)役割・経験の付与(ドリームチケットの付与、ジョブ・チャレンジ制度の導入など)、(4) 役員・上司のコミット(中期経営計画におけるD&Iの数値目標明示、具体的には2023年度末までに女性管理職比率30%など)であるとのことでした。
企業における女性活躍の推進は、福利厚生ではなく企業の戦略として明確に位置付けられており、具体的な取り組みが実践されていることが理解できました。

国際日本学研究科兼任講師 井上洋
明治大学大学院