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国際日本学研究科

特別講義「多文化共生都市・浜松—16年間の取り組みを振り返る」を開催しました

2023年04月28日
明治大学 国際日本学研究科

特別講義「多文化共生都市・浜松—16年間の取り組みを振り返る」を開催しました

2023年4月20日に、明治大学大学院国際日本学研究科主催の特別講義「多文化共生都市・浜松—16年間の取り組みを振り返る」がオンライン(Zoomミーティング)で開催されました。明大生に加え、大学教員・研究者、さらに地方自治体、省庁、市民団体の関係者を中心に、多様な分野から100名を超える参加者が集まりました。

講師は鈴木康友浜松市長。同氏は2007年に浜松市長に就任して以来、外国人住民が多いという浜松市の特徴をとらえ、多文化共生に積極的に取り組むとともに、多文化共生に取り組む全国の自治体のリーダー的存在として、この16年間に国内外で発信されてきました。そして、これ「まで浜松市長を4期務められた鈴木市長は、今月末をもって退任されることとなり、浜松市長として最後の講演が明治大学で開催されました。進行は山脇啓造国際日本学部教授が務めました。

最初に30分ほど鈴木市長の講演があり、浜松市の多文化共生の取り組みや国内では外国人集住都市会議をリードし、海外では欧州評議会が進める国際的な都市ネットワークであるインターカルチュラルシティ(ICC)への参加について、お話いただき、さらに今後の国がめざすべき方向性として、国と自治体の役割分担を明確に示し、外国人材受入れ施策実施の根拠となる基本法の整備、省庁横断的な司令塔機能を持つ組織として「(仮称)外国人庁」の設置、自治体への恒常的で十分な財政支援の三点を示しました。

 [鈴木市長の講演資料]

講演の後、山脇教授が鈴木市長の16年間の取り組みについて、第一期(2007-2011)、第二期(2011-2015)、第三期(2015-2019)、第四期(2019-2023)と任期ごとに、鈴木市長にとって一番印象に残っている出来事を尋ねていきました。特に外国人集住都市会議とICCへの参加を軸に質問がなされました。

鈴木市長は、リーマンショック後に日系人に対して国の帰国奨励策がとられたが、浜松市は2010年に外国人学習支援センターを起ち上げ、外国人支援をさらに強化したこと、ICCとの出会いによって、課題解決型の多文化共生から価値創造型へシフトし、浜松市で日韓欧多文化共生都市サミットを主催したこと、外国人集住都市会議も2015年の浜松会議の時に、次のステージに向かうため多文化共生会議と名称を変更する案がだされたが実現せず、残念ながら、会員都市も減少していることが述べられました。

一方、2018年12月の入管法改正によって、国もようやく新たなステージに向かおうとしているが、まだまだ国会議員には移民に対する反対意見が多いこと、そしてそれは国民の意識の反映でもあることが述べられました。

対談の中では、鈴木市長と山脇教授が共に参加した韓国・安山市での日韓欧多文化共生都市サミット、フランス・ストラスブール市での世界民主主義フォーラムの思い出も語られました。

その後、浜松市の日本語教育総合調整会議座長を務める嶋田和子アクラス日本語教育研究所代表理事と出入国管理庁初代長官を務めた佐々木聖子アジア福祉教育財団理事からコメントをいただき、ズームの参加者からもチャットで質問を受け付け、鈴木市長に回答していただき、閉会となりました。

講義後のアンケートでは、50名の回答者の四分の三の方が講義の内容が「とてもよかった」、残り2割の方も「よかった」と答えました。以下、受講者の感想の一部を紹介します。

「課題解決型ではなく、外国人材活躍という視点での取り組みは素晴らしいと思いました。自分も含めて口では言っているのですが、実際に浜松市でアクションを取られていることに感動しました。浜松市の取り組みは、日本の財産だと思います。今後も、鈴木市長にはこの分野でイニシアティブを取っていただけたら嬉しい限りです。」

「同化政策・多文化主義などを経てインターカルチュラルシティという発想が誕生するまでのお話など、とても興味深く勉強になりました。また、政治家の中での外国人労働者に対する意識が固定的であるというお話がとても印象深く、まだ選挙権を得たばかりですが、よりよい社会のために自分の権利をしっかり行使しなければならないと再認識しました。将来、外国人支援の仕事に就きたいという思いが強くなると同時に、自治体でも経済界でも様々な取り組みが行われていると知って、自分はどんなことに携わりたいのかもっと深く考えなければならないなと感じました。」

「鈴木市長の素晴らしいリーダーシップに敬服しております。山脇先生におかれても、大変わかりやすい進行、ありがとうございます。私自身、文科省の職員という立場上、外国人児童生徒等教育についての話を伺う機会はあっても、このように分野横断的に多文化共生の取組みについてお話を聞けるというのは大変貴重な経験で、多くの学びを得ることができました。」

「16年間の浜松市の多文化共生の歩みは鈴木市長だからこそここまで進んできたと改めて浜松市民として思いました。16年間お疲れ様でした。」

なお、特別講義の開催にあたって、欧州評議会でICCプログラムの起ち上げを担当し、浜松市での会議にも出席したイレーナ・グイディコヴァ氏と、北米のインターカルチュラリズム研究の第一人者で、浜松市が主催した2019年の会議にも参加したモントリオール大学のボブ・ホワイト教授からメッセージをいただきました。

Irena Guidikova, Head of Department for Children’s Rights and Sport Values, the Council of Europe
“Mr. Suzuki understood interculturalism and made it a policy for his city, Hamamatsu, even before it became an internationally recognised model. He is one of the truly visionary, courageous, pioneering members - indeed leaders - of the intercultural community. An inspiration to us all. I hope he will continue teaching new generations of policymakers and advocating interculturalism in Japan and the world. ”
(鈴木市長はインターカルチュラリズムが国際的に認められたモデルとなる以前にその意義を認め、浜松市の政策に採用しました。彼はインターカルチュラル・コミュニティのビジョンをもった、勇気ある、パイオニアのメンバーであり、リーダーでもあります。我々にとって大いなるインスピレーションとなりました。鈴木市長には日本そして世界の新しい世代の政策立案者を指導し、インターカルチュラリズムの提唱を続けていただきたい。)

Bob White, Professor of Anthropology at the University of Montréal
As the first mayor in Asia to adopt the intercultural cities model, Yasutomo Suzuki quickly became one of the movement’s key allies and innovators in the region. Through his commitment to inclusion and intercultural principles, he established the city of Hamamatsu as a leader on the world stage and paved the way for policies that improved the lives of newcomers.
(アジアで初めてインターカルチュラル・シティ・モデルを採用した市長として、鈴木康友氏はすぐにアジアにおけるこの運動の主要な支持者そして革新者となりました。インクルージョンとインターカルチュラルな原則にコミットすることで、彼は浜松市を世界のリーダーとして確立し、ニューカマーの人たちの生活をよりよくする政策への道を切り開きました。)

ウクライナのICC国内ネットワークのツイッターからも、ツイートをいただきました。

Intercultural Cities Network - Ukraine
“We have been honored to have Mayor Suzuki with us for many years! We extend our best regards to the Mayor and look forward to our close collaboration with the City of Hamamatsu.”
(長年、鈴木市長とご一緒できて光栄でした。市長にご挨拶申し上げるとともに、これからの浜松市との協力を楽しみにしています。)
 
明治大学大学院