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国際日本学研究科

特別講義「英語学習者の動機減退に関する研究の今までとこれから」を開催しました

2023年07月11日
明治大学 国際日本学研究科

 2023年7月5日,明治大学大学院国際日本学研究科主催の特別講義「英語学習者の動機減退に関する研究の今までとこれから」が明治大学中野キャンパスにて対面で開催されました。明治大学の学部生,院生を始め,大学教員・研究者,さらに出版関係者らなど,多様な分野から多くの参加者がありました。

講師は,神奈川大学国際日本学部教授の菊地恵太氏であり,氏はこれまで長きにわたって英語学習の動機減退(demotivation)に関する研究をリードしてきました。当日は2000年代以降,国内外で行われてきた英語学習者の動機減退に関する研究で何がわかってきたのかに関して,菊地氏による研究も踏まえながら発表が行われました。テーマに関するグループワークでも活発な話し合いが行われただけでなく,講演後にも参加者から多くの質問が寄せられました。

以下,参加者(一部)からの感想です。

「本日の講演会から学んだことは2つある。1つ目は、「決めつけない」ことだ。自身にも言えることだが、多くの先行研究で言及されている事柄は、その可能性が高いだけであるにも関わらず、それが正しいと捉えてしまいがちである。前提を疑い、問題を提起することで、新たなリサーチクエスチョンが生まれ、ひいてはより良い研究につながっていく点を踏まえると、取り入れるべき考え方だと感じた。2つ目は、「実践的な視点」の重要性だ。本来、自分の専門分野がより良いものになっていく手助けを学術的な視点から行うのが研究であるが、研究が進むにつれ、「分析結果が出たのは良いが、実践にどう活かせるのだろう」と悩むことが度々ある。今回のお話から、研究という行為における、そもそもの部分をブレさせない重要性を改めて学んだ。」(KT)

「神奈川大学の菊地先生による英語学習における動機減退に関する講演に参加させていただきました。中でも、demotivator(=動機減退を引き起こす要因)とdemotivation(=動機減退そのもの)を区別して考えることが大切であるというご指摘は、今後の研究を続けていく上でも非常に重要なことだと感じました。また、参加者同士でペアになって話す機会などもあり、他者との英語学習経験と比較しながら、どのような時に自分の動機づけが下がったのかという自分の経験を客観的に振り返ることができたり、動機づけが下がっている生徒に対して教師ができることを考えたりすることができ、研究と実践の観点から動機減退を捉え直す大変貴重な時間でした。今後の私自身の研究でも、研究と実践の関連性を考えながら、取り組んでいきたいと思います。」(YK)

「今回の講演で感じたことは、相手に訊くこと(自分が知りたい情報)とその返答が一致しているのか、きちんと確認することが大切だということである。例として、本講演では、動機減退(やる気が下がること)と過去に感じた嫌だったことの違いを説明していただいた。「モチベーションが下がったと感じたのはいつですか?」という質問に対し、「~されて嫌だった」という答えが多かった。この回答は、問いに答えているようで少しずれた答えになってしまっている。そのため、過去のことを思い出させて答えさせるのは少し難しいかもしれないが、その際、問いと答えが対になっているのか確認することが大事だと思った。また、発表のときには、発表者が一方的に話し続けるのでは無く、聴き手側に時々話してもらい、一体感を創り出すことの重要性を再認識した。それゆえ、自分の発表の時にも聴衆を巻き込んで、退屈させないようにしたいと思った。」(SK)

「廣森先生は「やる気は伝染する」と言いますが、動機減退を知ることで、「demotivation」も伝染すると感じました。講義中、周囲の学生が不真面目だとやる気が削がれることがあります。また、「興味があることと、動機付けられることは異なる」という話も興味深かったです。実際、高校生に英語を教える際、興味はあるものの方法が分からずモチベーションが低いケースが多いです。学習意欲の低い学生への動機付けに取り組んでいて、「内発的動機付けがない学習者には、外発的動機付けが効果薄い」と聞き、意欲を引き出す方法に焦点を当てるべきだと感じました。今回の講演で学んだ動機減退は、自分や他者に英語を教える際のやる気マネジメントに有益でした。学部一年生で初めての学術講演会に参加し、先生や大学院生とのディスカッションで非常に有意義な時間を過ごしました。」(KK)

「モチベーションの向上方法は知っていたが、逆に下げる要因は新鮮だった。講義で私たちが発表し、菊池先生が言及したように、アンケート調査で聞き方や選ぶ人、質問内容を調整し、望む回答を得ることが重要だと分かった。動機減退は「学習行動選択や忍耐力、努力ができない」状態とされたが、モチベーションが高いと思われる状況でも真剣さを求められた経験から、外部判断は難しいと感じた。自己報告のチェックシートを使っても、主観や個人差が大きく影響するため、精神的調査は困難だと思った。特に、どの調査方法を選び、モチベーションがあるが嫌でやらないか、本当にない状態かを区別するのが難しい。人の精神的事柄がどう起こるか疑問を持つことが多く、定義や調査方法の話が参考になった。今回の内容を今後の学習に活かしたい。貴重な講義をありがとうございました。」(IY)

「今回、菊池先生の講演会では、自分の研究とは直接的な関わりのないテーマについて詳しくお聞きするという貴重な体験を得られました。そして、動機減退に関する研究について、たくさんのお話を聞くことができました。中でも印象に残っているのが、「motivationの持っていき方がわからないから、demotivationになるのか?」という問いでした。生徒がやる気を持っていても、それをどうやって学習につなげるのかという点について不明確であると、せっかくのやる気がもったいないような気がしました。しかし、どのような方法が効果的なのか、その方法はすべての生徒にとって適した方法なのかという疑問が生じました。今後の学習において、もっと深めていきたいと思います。また、本当に調査したいことに関して対象者が理解しているかどうかという点については、自分が近くアンケート調査を行う事もあって、非常に重要なポイントであることが再確認できました。調査を行う際には、このことを念頭に置いて準備をしていきたいと思います。」(NH)
明治大学大学院