国際日本学研究科の学生がユーソナーを訪問しました
2025年07月22日
明治大学 大学院国際日本学研究科
2025年度春学期、大学院(博士課程前期)国際日本学研究科「多文化共生・異文化間教育研究領域」の科目「企業とダイバーシティ」における企業インタビュー、その最後は7月9日の午後、訪問したユーソナー株式会社(新宿区西新宿)でした。
ユーソナーは、1990年に設立されたデータベース・マーケティングの支援事業を行う、従業員数約300人の企業です。日本政策投資銀行、ゼンリン、三井物産企業投資などから出資を得て事業を拡大させており、自社保有データ国内最大級の法人企業データベースを構築し、様々な企業の営業活動の始まりからクロージングまで各フェーズにおける企業の課題を解決するツールを提供しています。同社と契約しているのは約1千社/年で、各業界のトップ企業が名を連ね、DX化に取り組む官公庁にも及んでいます。
同社の法人企業データベースは、「LBC」(Linkage Business Code )と呼ばれるもので、上場企業の有価証券報告書を筆頭に法人ナンバー、登記法人情報、企業の事業所や店舗、支店、工場の情報、医療法人、学校法人、宗教法人、社団や財団、官公庁、地方自治体、さらには注意を要する反社会勢力などの情報まであまねく網羅するものです。
そのLBCでは、年間2千万もの項目についてメンテナンスが行われており、それを辞書として、企業において散在する顧客データやリードデータをクレンジング、名寄せしていきます。それによって「顧客と市場の可視化」と「顧客データメンテナンス」が同時に実現され、企業が営業活動を行う上で重点的にアプローチすべき企業群が明確に把握できるメリットが生まれてきます。それによって企業の市場戦略が明確化され、「脈のある企業」の発掘にもつながるというものです。
そのために、プランソナー(ブラウザツール)、mソナー(モバイルアプリ)、ガイドソナー(PCアプリ)などを用意しているとのことでした。
データ収集はまず機械的に行いますが、それを精査して企業ごとに寄せていく作業は人の眼でも行うようです。そのために在宅ワーカーも多数、活用しているとのことでした。最先端のIT技術を使いながらも、人による地道な作業とその経験知が、膨大ながら精度・鮮度の高いデータベース構築につながるという、アナログ的な意識の重視も事業運営の基盤にあるように感じました。
当日は、社内見学の時間も設けていただきましたが、各職場は映画作品のキャラクターを取り込んだ遊び心のあるものでした。出社して楽しめる職場の雰囲気が、若い社員のモチベーションやエンゲージメントにつながっているのだと感じた次第です。
ユーソナーは経団連に3年前に加盟し、経団連が主導する女性活躍のための「2030年30%ヘのチャレンジ」(#Here We Go 203030)に参画しています。当日、ご説明いただいた鈴木彩乃執行役員(営業本部企画グループ)は、「経団連のリーダーシップ・メンタープログラムに参加し、積極的に発言するよう心がけている」「当社は女性社員、管理職の比率はまだ低いが、経団連の活動に参加して目標を達成したい」と決意を示しておられました。
引き続き、サポート本部総務人事グループの橋本健司さん、水田早紀さんより「健康経営優良法人認定」取得や、女性の活躍推進に関する状況等が優良な企業を認定する制度「えるぼし」、仕事と子育ての両立支援に積極的に取り組んでいる企業を認定する「くるみん」の取得に向けた取り組みについて、詳しくご説明いただきました。
ユーソナーは、福利厚生・人事制度面でも様々な工夫を行っていて、例えば社員に「時間の余裕」を感じてもらう自由シフト制と一日の所定労働時間を7時間に変更したことや、「お金の余裕」を感じてもらうランチの無料化、技術書籍類の購入補助、住宅費の補助、「心の余裕」を感じてもらう心身の健康(面談、カウンセリングの実施、予防接種全額負担など)にも取り組んでいるとのことでした。
ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョンについては、法定率を上回る障がい者雇用を実現するために、「チャレンジド採用」という発達障害(広汎性発達障害、ADHD、自閉症スペクトラム、アスペルガー症候群等)等のハンディキャップを持たれる方を対象とした制度を用意、静かな執務環境のもとで長所を活かせるよう工夫されていることに感銘を受けました。
外国人社員の採用については現在、4人とまだ少ないですが、当日は、入社21年のキャリアを持つ韓国籍のシステム開発マネージャー潘錦良(ばんくんやん)さんからお話を伺うことができました。潘さんは、ユーソナーの創業間もない2004年に入社、システム開発一筋で働いてこられた方ですが、「社内に差別がなく安定した業務が遂行でき、職務環境も整えられていて能力発揮のできる会社である」と胸を張っておられました。
今回のユーソナー訪問では、サポート本部MXグループの桧山直樹さんに当方の関心事項を踏まえ細やかなご配慮、ご手配をしていただきました。履修生も充実したプログラムに感激していましたが、この経験を活かして、企業など様々な組織におけるダイバーシティ・エクイティ・インクルージョンの進め方を構想できるよう、さらに知見を深めていくものと期待しています。
国際日本学研究科兼任講師 井上 洋