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国際日本学研究科

国際日本学研究科 特別講義「やさしい日本語とやさしい英語」をオンラインで開催しました

2021年02月10日
明治大学 大学院国際日本学研究科

2021年2月3日に、明治大学国際日本学研究科主催の特別講義「やさしい日本語とやさしい英語ーメルカリが進めるインクルーシブなコミュニケーション」がオンライン(ズーム・ミーティング)で開催されました。一般公開の講座としましたが、明治大学の学生や教員の他、他大学の学生や教員、そして行政、企業、市民活動関係者さらに日本語教師など、多様な分野から約200名の参加者が集まりました。

講師は、株式会社メルカリLanguage Education Team(LET)にて、日本語トレーナー&コーチを務めるウィルソン雅代氏。同氏は、日本語学習プログラムやスピーキングテストを開発。また「やさしいコミュニケーション」の社内トレーニングを設計・主導しています。司会は山脇啓造国際日本学部教授が務めました。

この日の講義で強調されたポイントは以下のとおり。

・よい意思決定をし、強い組織を作るためには多様性が必要。
・言語レベルが異なるメンバーが集まる議論の場で、言語の壁を低くし、みながインクルーシブに意思決定に参加できるようにするためには、全員がわかる言語が必要。
・そのためのやさしい日本語、やさしい英語。
・やさしい日本語もやさしい英語もゴールではない。コミュニケーションの質にこだわる。

資料の一部は、GitHubにて公開されています。
https://github.com/mercari/yasashii-wfh-comms

講義後のアンケートでは、回答者約120名のほぼ全員が講義の内容に満足したと答えました。以下、受講者の感想の一部を紹介します。

「やさしい日本語や英語を使うことが目的ではなく、誰もが意思決定の場に参加できるようにするという話が印象的でした。企業はもちろん、学校や地域でもこれは非常に大事なことだと思います。日本に住んでいるなら日本語を話せるようにするのが当然という考え方ではなく、歩み寄りが絶対に必要ですね。そうすることで、自然に視点も変わっていき、お互いを理解しようという意識も生まれると思います。」

「やさしい日本語・英語を普及させることが目的ではなく、コミュニケーションの質を高めること、また、インクルーシブなコミュニケーションは、伝達だけではなく、意思決定のためであるということがとても印象に残りました。英語母語話者や日本語母語話者だけでなく、言語弱者や言語理解に障害のある知的障害や発達障害の方にとっても、自己決定できることにつながり、その人らしく社会の中で豊かに生きていく上でとても重要であると感じました。」

「意思決定には非母語話者が参加しないものだという意識を日本語話者が無意識のうちに持っているという言葉にハッとさせられました。来年度、日本語非母語話者(外国籍住民)と市民が共同で行う防災イベント(やさしい日本語含む)を行う予定なので、本日ご紹介いただいた無意識バイアスワークショップやコミュニケーション・チーム・ビルディングのような活動を取り入れていきたいと思います。」

「やさしい日本語・英語の普及、学習を目的化しない。やさしいコミュニケーションを学んで使う理由は、あくまで『新たな価値を生み出す世界的なマーケットプレイスを創る』というミッションに向かうためであるということ。このことは当たり前のようで、大変大切なことを示しているように思います。様々な場所で、方法論が示されることによりそれを取り入れ実施することが目的化されてしまうことが少なくないように思います。ゴールを達成するために、みんなで話し合い、アプローチや方法を共に考案していくことを大切にするという点は大変勉強になりました!ありがとうございました。」

「やさしいコミュニケーションの型にこだわっているのではなく、あくまでもコミュニケーションの質を高め良いパフォーマンスするという本質がよく理解できました。このやさしいコミュニケーションはただ、言語が違う人同士が円滑にコミュニケーションできるだけでなく、普段のゼミや授業での話し合いでも生かせるべきものだと思いました!!
私自身もとても話し合う環境は配慮されるべきだと考えています。そこにいる全員が納得いく答えを出せるためには、誰も取りこぼさない、話しやすい場が必要だと思うからです!なので、普段からも意識していきたいと感じました!」

「心理的安全性というのは、多言語間のコミュニケーションだけでなく、同じ言語の話者同士でも必要であるし、仕事だけでなく、家庭や学校といった日常生活におけるコミュニケーションでも必要だと思いました。相手のことを思い、相手の理解を確認する行為は、何事においても重要だと思いました。」

なお、講義が終了し、講師退出後の20分ほどを使って、受講者の間で情報交換の時間がもたれ、そちらにも約160人が参加しました。講義の感想共有に加え、東京都や外務省、入管庁など行政やNPOのやさしい日本語関係のイベントや活動の紹介が、画面共有やチャットを使って行われ、オンラインならではの交流の場となりました。やさしい日本語への関心の高まり、そして全国への広がりを感じさせる時間となりました。
明治大学大学院