出版されている本を読んで世界を広げるというだけでなく、「自分が読みたい本は、自分で作ってしまうというのもオススメ」と、学生時代から作っているノートを披露する木ノ下氏。内容は、様々な覚え書きや切り抜きなど。
6月30日(火)に情報コミュニケーション学部日置ゼミ主催で、劇団・木ノ下歌舞伎主宰の木ノ下裕一氏のオンライン講演会「木ノ下裕一さんに聞く」を行いました。木ノ下歌舞伎は、2006年に旗揚げ後、歌舞伎や浄瑠璃といった日本の江戸時代の演劇作品を、現代劇として上演する試みを続けてきた団体です。主宰の木ノ下氏は、「補綴」(ほてつ)と呼ばれる、原作の内容を整理して上演に合わせた台本を作成する作業や、公演ごとに招聘されるさまざまな演出家に、作品の解釈や時代背景等について説明し、ともに舞台を作り上げる仕事を担っています。
講演会では、5月から6月にかけて東京芸術劇場などで上演予定だったものの、中止となった『三人吉三』のオンラインでの稽古や、これまでの木ノ下歌舞伎の活動についてお話しいただきました。また、新型コロナウイルス感染症流行下での、舞台芸術のオンライン配信の試みや、いま学生の皆さんに勧めたい本などにも話題が及びました。
オンライン配信について、木ノ下氏から、ただ動画を配信するというだけでは、演劇の特質を発揮するのは難しく、団体やアーティストが、このような事態になる以前から動画などによる発信のあり方を模索してきたかどうかが試されるのではないかという発言がありました。木ノ下歌舞伎では、従来から動画による配信ではなく、『木ノ下歌舞伎叢書』等の出版物や、ウェブ上の論考やエッセイといった文字のメディアで積極的に発信を行っており、中止になった『三人吉三』の場合も、公演特設サイト上でさまざまな情報を掲載しています。
こうしたお話に対して、参加者からもチャット機能を使用してさまざまな質問が寄せられ、終了時刻は予定を大幅に過ぎることとなりました。
感染症流行下で、これまでの積み重ねが試されるということや、「ただ過去の映像を流すだけというのも限界があるが、一方で何かをやらなくてはいけないという感覚もある」という木ノ下氏の言葉は、研究や教育の場合にも当てはまるのではないでしょうか。
木ノ下歌舞伎の次回公演は、10月〜11月に『摂州合邦辻』を予定しています。