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研究科長あいさつ

理工学研究科長 理学博士 立川 真樹



私は大学院生のとき、レーザーが自発的に点滅を繰り返す現象(レーザーのパルス発振)を研究していました。普通のレーザーパルスは、周期的に繰り返す規則正しいもので、その仕組みもよくわかっていました。ところが、少し条件を変えてやると、全く周期性のない不規則な点滅が観測されます。なぜそのようなことが起きるのか、当時誰にもわかっていませんでした。私たちはその謎を解こうという意気込みに燃えて、研究に没頭する日々を過ごしました。そして、数ヶ月間の試行錯誤の結果、数理モデルとコンピュータを使って不規則な点滅を再現することができたのです。私は、そのときの喜びと充実感が忘れられなくて、いまでも光の研究を続けています。

私たちの発見は、ごく限られた分野のささやかなものです。科学技術の進歩の中では、ほんの小さな一歩ですが、それでも世界で誰も踏み出さなかった最初の一歩なのです。大学院での研究生活では、いまだ答えのないテーマを探究します。おそらくほとんどの時間は試行錯誤の連続で、期待と失望の日々となるでしょう。しかし、その苦労の末に答えが見えたとき、喜びは計り知れないものになります。皆さんには、こうした研究の過程すべてを楽しんでもらいたいと思います。

理工学研究科は、電気工学、機械工学、建築・都市学、応用化学、情報科学、数学、物理学の7専攻で構成されています。自然科学と数理を探究する理学と、その知見を応用して技術革新をもたらす工学を基軸としつつ、建築・都市学専攻には総合芸術系を擁し、環境デザインと芸術・文化論を融合させたユニークな研究を展開しています。私たちの研究成果は論文や学会を通じて世界に発信され、人類共通の財産となります。科学に国境はありません。大学院での研究は、世界中で営まれている知の探究の一部なのです。明治大学の大学院には、国際学会での発表や海外の研究機関との共同研究をサポートする制度があります。このような機会を積極的に利用し、世界中の研究者と交流して視野を広げてください。

大学院での学びは研究を通した学びです。そこには未知の課題に挑戦する醍醐味があります。主体的に取り組めば取り組むほど研究は面白くなり、社会のどんな局面でも役に立つ人間力が身に付いていくでしょう。私たちの研究が世界を動かしていくとしたら、その一番の原動力は、研究を通して成長した皆さん自身です。明治大学大学院での学びをステップに、より大きな世界へ羽ばたいてほしいと思います。

明治大学大学院