写真1:薬用植物のジギタリス(強心配糖体を含む)と薬効成分のβ - アミリンの化学構造
写真2:カビの生産するピリピロペン。上段(赤色)が本来の前駆体化合物と生成物のピリピロペン、下段(青色)が異なる基質の投与によるピリピロペン類縁体の生産を示しています。
私たちの身の回りの植物や微生物はさまざまな有機化合物を生産し、これらは医薬品や食品成分、香料、材料などとして人間の生活に大変役立っています。このような有機化合物はとても多様で複雑な分子構造を有しており、それゆえに多彩な生理作用を発揮します。これらはすべて生体内の酵素によって作られていますが、私たちは酵素が一体どのようにして複雑で多様な分子構造を作っていくのか、その合成のメカニズムを調べています。例えば、多くの薬用植物の薬効成分である写真1に示すβ - アミリンを作る酵素を明らかにしました。また、カビが作る化合物のなかで血中コレステロール低下作用があるピリピロペンを作る酵素群を発見しました。これらの酵素に変異を加えたり、別の基質を反応させることで、新しい化合物を作り出すことが可能になりました。生物の持つ物質生産能力を理解し、それを上手に利用することで新しい機能性分子を創製し、我々の生活を豊かにすることを目指しています。(久城 哲夫 准教授)