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国際日本学研究科

経団連、及び経団連の会員企業におけるダイバーシティ・インクルージョンの取り組みを聴きました(その2)

2022年07月20日
明治大学 大学院国際日本学研究科

国際日本学研究科の多文化共生・異文化間教育研究(博士課程前期)、春学期開講「企業とダイバーシティ」の模様を紹介する第2部は、株式会社JERA執行役員(D&I担当)の藤家美奈子さんとJX金属株式会社ESG推進部副部長の野田麻由さんのお話です。
JERAは、東京電力フュエル&パワー株式会社と中部電力株式会社の出資により2015年に設立された企業です。藤家さんは、東京電力入社後、長く研究所においてヒューマンエラーの研究をされ、その後、支社長などを経て、JERAで監査役を務めた後、D&I担当の執行役員になられました。JERAは、電力、ガス、熱供給の事業に加えエネルギーインフラ資源の開発、採掘、加工、輸送などの事業を展開しています。この業界特有の男性中心の社員構成でスタートしましたが、会社の進化を実現するための戦略の中核に、ダイバーシティとインクルージョンの推進を据えています。
多様な人々が、公平・公正な環境の中で、互いに尊重し合い、大いに力を発揮して、組織への貢献と自己の成長を果たせるインクルージョンを実現していくというメッセージを社の内外に発信しており、その原則は、多様な価値観・グローバル視点を活かすこと、フェアネスを徹底することであると藤家さんは強調されていました。
そのために指導的立場の女性比率の目標設定、女性社員の積極的な採用を行うとともに、具体的な取り組みは、(1)仕組み・制度、(2)行動変革、(3)カルチャーの3つに整理し体系的に実施しているとのことでした。例えば、課長級女性を対象とする取り組みとしては、スポンサーシップがあり、シャドウイングの実施やスポンサーからネットワーク構築、露出の機会の提供などが行われています。また、異業種女性リーダーと交流も行われており、これはセルフブランディングを図ることを目的としているとのことでした。
また男性に対しては、チェンジリーダープログラムを実施しており、マジョリティーが持つ特権に気付き、自らがD&Iを推進する価値について理解してもらう講義も行っています。
2021年には3月と11月に「ダイバーシティ月間」を設け、講演会や他社との交流イベントなども行ったとのことですが、これは社内のカルチャーを変えるための取り組みです。
外部講師の最後は、JX金属の野田さんでした。JX金属は、1905年の創業、日立の銅鉱山開発を起点とする総合非鉄メーカーです。電子機器等に欠かせない銅を中心として、資源開発・製錬から先端素材の生産、リサイクルまで幅広い事業を営んでいる百年企業ですが、弁護士のお仕事をされていた野田さんは10年前に中途採用で入社、現在は、子育てをされながらダイバーシティ・インクルージョンをはじめとするESG経営の推進に取り組んでおられます。
JX金属は国際競争が激化するなか、「2040年のありたい姿」を掲げ、その達成に向けた人材の確保、付加価値創出型人材の育成、仕事本位、自由闊達な企業風土と職場づくりにより、新しい時代や価値観に適応する人材を育むこととしています。
そのために当然必要となるのが、働きやすい職場づくりであると野田さんは強調されていました。様々な立場の社員が仕事を続けられることを大前提とし、育児・介護支援策、リモートワーク・オンライン会議の普及・浸透、コアなしフレックスタイム制度などを行い、併せて人材育成・能力開発を進め生産性や社員の働きがいを高める取り組みを強化しているとのことでした。
同社は2020年6月に本社移転を行いましたが、それを機会にABW(Activity-based Working)というオフィスのレイアウト採用やICTツールの活用、Face-to-Face を重視したスペース設置を通じて、組織の機動力、効率性を上げています。
野田さんご自身が子育て中ということもあり、そうした会社の取り組みがお仕事を進める上で役立っているという実感のこもったお話も聞かせていただきました。
以上、日々進化する企業のダイバーシティ・インクルージョンですが、全ての社員の働きがいを高め生産性の向上につながっていることを理解できました。

国際日本学研究科兼任講師 井上洋
 

JX金属ESG推進部野田麻由副部長による講義JX金属ESG推進部野田麻由副部長による講義

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