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ゲストスピーカーによる特別授業(10月5日実施)

実施日: 2017年10月5日(木)13:30~15:10
実施場所: 和泉キャンパス M602教室
科目名: 基礎演習
テーマ: 現代社会における英国学派の国際政治理論の意義——グローバリゼーション、EUとの関連において
ゲストスピーカー: 大平 道広 氏 (淑徳中学・高校 社会科講師)
実施内容:
 「現代社会における英国学派の国政政治理論の意義——グローバリゼーション、EUとの関連において」というタイトルで、大平道広先生にお話をうかがう機会を得ることができました。「世界で活躍できるビジネスパーソンの養成を目指す」ことを目標とする商学部の学生さんに向けて、非常に示唆に富むお話をうかがいました。
 イギリスのEU離脱やアメリカのトランプ大統領の誕生は「グローバリゼーション・ファティーグ」の兆候、つまり現代社会におけるグローバル化のひとつの反動としてとらえてみることができます。実はこのことは、1950年代からイギリスで主に外交史・国政政治研究に従事してきた「英国学派」と呼ばれる研究者集団よって、すでに予測されていたことを、大平先生はとても分かりやすく解説してくださいました。 
 今回の中心となる話題はイギリスのEU離脱でしたので、まず大平先生にEUが発足されるまでの歴史的背景を1950年代のヨーロッパ地域統合(欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)、欧州原子力共同体(EURATOM)、欧州経済共同体(EEC))から1960年代の欧州共同体(EC)そして1990年代の欧州連合(EU)まで解説して頂き、さらに2016年にイギリスがEUからの脱退を正式に決定したことで今後どのような影響がみられるのかを説明して頂きました。
 そして今回のイギリスの決断が、英国学派の理論から考えてみれば、理解できる結果であったことをお話頂きました。この英国学派の理論の特徴は、世界政府が存在しない国際政治においても、ヨーロッパにはじまり、今日の主権国家体系全体を覆う独特の社会規範や制度が存在し、それらが機能することによって「国際秩序」ないしは「国際社会」が形成・維持されるという考え方です。同学派の中心的存在であったH.ブルの『国際社会論——アナーキカル・ソサイエティー』(1977)によれば国際政治には3つの伝統—「ホッブズ的伝統」(国際政治は主権国家の戦争・競争である)、「カント的伝統」(人間からなる社会/人類共同体の形成、EUに象徴される)、「グロチウス的伝統」(主権国家間の調和)——があります。三番目の「グロチウス的伝統」が英国学派の国際社会論に相当するもので、先の2つの伝統の中庸ともいえる立場です。
 英国学派の論は、グローバル化によって生じた様々なひずみを改善するための手掛かりを得ることができ、改めて読み直してみる価値があるようです。大学生の方々にはぜひH.ブルの著作に挑んで頂きたいと思います。 







泉 順子(科目担当教員)