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理工学研究科

【物理学専攻】久保雄宏君がドイツ マックスプランク研究所のVisitor Ship Programに招聘されました。

2013年07月30日
明治大学 理工学研究科

理工学部物理学科素粒子論究室の久保雄宏氏は2011年3月に博士論文「質量異方性を持ったKepler問題の量子カオス-周期軌道理論とランダム行列理論の接点として-」により理学博士号を本学より授与され,引き続き本学法人PDとして島田徳三教授と共同で量子カオスの研究を行って来ました. 本年9月よりカオス・複雑系研究のメッカの一つであるドレスデンのマックスプランク研究所(Max-Planck-Institut für Physik komplexer Systeme)のVisitorship Programによりポストドクとして滞独研究をします. イルメナウ工科大学(Technische Universität Ilmenau)のMartina Hentschel教授の招聘によるものです.
理学博士の審査報告のはじめの部分を引用します.
「古典力学では系の非線形でカオスが発現する.このカオスがその系の量子論に
どのように現れるか研究するのが量子カオスの研究である.これは大変野心的な分野である.
著者は質量異方性のある電子のケプラー問題(AKP)に着目した.信頼度判定に工夫を凝らした方法を用いて
AKPの量子準位と波動関数を1万番目の励起状態にまで求めて, 異方性の変化に伴う量子準位統計の変化を解析した.
著者は一方で,Anderson局在・非局在転移(絶縁体・金属転移)に対する拡張したランダム行列模型を考察した.このランダム行列模型の温度に相当するパラメータの変化に伴う固有値分布の変化を分析して,これがAKPの量子準位の統計の変化をよく説明することを示した.…」
久保氏がPDの間に発表した論文の図面の一つです. 左は質量異方性をもった電子と陽子の作る‘水素原子'の第438番目の励起状態の波動関数がどのように古典理論と対応するかを示す伏見関数です. 右は579番目の励起状態の伏見関数です.左の図では赤2点, 右の図では赤4点とその周りに都合緑12点が書き込まれていますが, これらは,この系の古典理論での電子の周期軌道の「ポアンカレ切断面」です.明らかに古典理論が 量子論の波動関数に痕跡(スカー)を引き起こしていることが示されています.
久保氏のコメント: 明治大学で学んだことを存分に生かして, ドイツに骨を埋めるつもりで頑張ります!
久保氏(D2)と島田教授のAROB-09最優秀論文賞受賞!の理工学部ニュース(2009年2月23日)も参照して下さい. http://www.meiji.ac.jp/sst/information/2008/6t5h7p0000000ouh.html
 

明治大学大学院