理工学研究科応用化学専攻生体関連材料研究室(相澤 守教授)では、新しいがん治療法として注目されている養子免疫療法(細胞免疫療法)に有用な「免疫系に積極的に働きかけるイムノセラミックス」の研究に取り組んでいます。養子免疫療法とは、患者自身の免疫細胞を体外で培養し、再び体内に戻すことで、患者自身の免疫力を高める療法であり、副作用のリスクが低いという利点から、新たながん治療として期待されています。
本研究室では、フェニルボロン酸ポリマーに含まれる BO₂ 基が免疫細胞の表面に存在する糖鎖と相互作用することで免疫細胞を活性化できるという報告に着目しました。そこで、同様にBO₂ 基を含むホウ素含有アパタイトセラミックスを作製し、免疫細胞の培養基材として利用する研究を行なってきました。
これまでの研究で、ホウ素含有アパタイトセラミックス上で免疫細胞を培養したところ、免疫細胞を活性化できることを明らかにし、培養した免疫細胞をがん化マウスに投与した結果、がんの成長を抑制することに成功してきました。
本発表では、研究のきっかけとなったフェニルボロン酸と作製したホウ素含有アパタイトセラミックスの免疫賦活効果を比較した実験結果について報告しました。その結果、フェニルボロン酸と比較して、ホウ素含有アパタイトセラミックスの方が高い免疫賦活効果を示すことを明らかにし、養子免疫療法における更なる有効性を実証することができました。
上記の研究結果が認められ、12月12日に香川県の高松商工会議所にて開催された第27回生体関連セラミックス討論会にて、「学生発表賞」を授与されました(対象発表17件中3件が受賞)。本学会は、生体関連材料に関するサイエンスとテクノロジーに関する研究発表形式の討論会であり、今回で27回目の開催となります。なお、明治大学生命機能マテリアル国際インスティテュートの一環として実施されました。
受賞名:学生発表賞
学会名:第27回生体関連セラミックス討論会
開催地:高松商工会議所
開催日:2025年12月12日
発表者:〇大嶋勇輝・吉冨 徹・野瀬雅人・鄭 允迪・平岡和佳子・永井重徳・相澤 守
演題 :ホウ素含有アパタイトセラミックスとフェニルボロン酸との免疫賦活効果の比較検証