Go Forward

農学部

【農学研究科農芸化学専攻博士前期課程2年】高橋優さんが生物工学若手研究者の集いオンラインセミナー2022にて優秀発表賞を受賞しました

2022年06月30日
明治大学 農学部事務室

受賞した髙橋優さん受賞した髙橋優さん

 2022年5月27日に行われた生物工学若手研究者の集い オンラインセミナー2022で大学院農芸化学専攻博士前期課程2年の髙橋優さん(環境バイオテクノロジー研究室)が優秀発表賞を受賞しました。この賞はオンライン形式で口頭発表及び質疑応答を行った演題の中から優秀な発表を表彰したものです。発表演題は「エタノール添加とEuglena gracilis細胞の沈降速度の関係」です。本研究は、明治大学と理化学研究所微細藻類生産制御技術研究チーム(鈴木健吾チームリーダー)の共同で行われたものです。

研究内容:
 Euglena gracilis (以下ユーグレナ)は、貯蔵多糖であるパラミロンやアミノ酸、有機酸など、様々な物質を合成・蓄積する真核微細藻類です。このような有用性から産業化が既に行われていますが、更なる推進には、細胞生産量の向上と同時に低コストかつ効率的な回収が求められています。また、ユーグレナはエタノールやグルコース、リンゴ酸など様々な物質を炭素源として利用できることが知られています。特に、エタノールを添加してユーグレナを培養すると、細胞の増殖速度の向上や細胞内パラミロン含有量の増加、酢酸生産が可能であることが分かっています。そこで、本研究では、ユーグレナの細胞の沈降速度を上げて回収の効率化に貢献することを目的としました。
 Euglena gracilis NIES-48という株を使用し、合成培地であるCM培地を用いて培養を行いました。培養条件は、1 LのCM培地のみを用いたコントロール条件と、3つのエタノール条件の合計4条件です。エタノール条件の培地は、エタノールの終濃度がそれぞれ0.5, 1, 2%となるように設定しました。
 実験から、細胞の沈降速度は、0.5% エタノール条件と1% エタノール条件で最も速く、次に2%エタノール条件で速く、コントロール条件が一番遅いという結果が得られました。こういった結果が得られた原因として、細胞の大きさ、重量、形態、運動性を考え、さらに実験を行いました。まずは、細胞の大きさを測定しました。その結果、細胞の平均の大きさは、0.5% エタノール条件、1% エタノール条件で大きくなることが分かりました。次に、細胞の重さの違いを調べるために、細胞の乾燥重量の測定を行い、細胞培養液の濁度(OD730)あたりの細胞の乾燥重量を算出しました。その結果、0.5%エタノール条件と1% エタノール条件では、コントロール条件と比較してOD730あたりの細胞の乾燥重量が重くなりました。これらの結果から、エタノールを添加して、ユーグレナを培養すると細胞の沈降速度が向上することが分かりました。また、その原因は、細胞の重量である可能性が示唆されました。今後は、その他の要因として考えられる細胞の形態、運動性についても調べていく予定です。本研究の成果から、エタノールを用いた培養と重力沈降法の利用は、培養後に特別な処理をすることなく、ユーグレナ細胞を効率的に回収することができる可能性を示唆しています。

生物工学若手研究者の集いHP:
https://www.sbj.or.jp/division/young.html
農芸化学科HP:
https://meiji-agrichem.jp/
環境バイオテクノロジー研究室HP:
https://osanaimeiji.wixsite.com/website