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農学部

【農芸化学専攻】第37回ユーグレナ研究集会において博士前期課程2年の髙橋優さん(環境バイオテクノロジー研究室)が若手優秀発表賞を受賞しました

2022年11月28日
明治大学 農学部事務室

受賞した高橋さん受賞した高橋さん

 2022年11月12日に行われた第37回ユーグレナ研究集会で大学院農芸化学専攻博士前期課程2年の髙橋優さん(環境バイオテクノロジー研究室)が若手優秀発表賞を受賞しました。この賞は口頭発表及び質疑応答を行った演題の中から優秀な発表を表彰したものです。発表演題は「エタノール添加培養により加速された真核微細藻類Euglena gracilisの重力沈降」です。本研究は、明治大学と理化学研究所微細藻類生産制御技術研究チーム(鈴木健吾チームリーダー)の共同で行われたものです。

研究内容:
 Euglena gracilis (以下ユーグレナ)は、貯蔵多糖パラミロンや有機酸、アミノ酸、脂質など様々な有用物質を合成・蓄積する真核微細藻類です。このような有用性から産業利用されていますが、更なる産業化の推進には、細胞や有用物質の生産量向上に加えて、低コストかつ簡便な回収が必要です。細胞回収法の中でも、重力沈降法は、低コストで簡便、細胞を傷つけないというメリットを持つ一方、他の回収方法と比較して回収効率が悪いというデメリットを持ちます。そこで、私はこの重力沈降法を用いた際の、ユーグレナ細胞の沈降速度を改善することによる細胞回収の簡便化を目指しました。特に、添加して培養を行うことで、生育速度やパラミロン含有量が向上することが知られているエタノールという物質に着目し、細胞とパラミロンの生産性の向上と同時に、細胞回収率が向上する方法の開発を行いました。
 使用菌株は、Euglena gracilis NIES-48という株です。また、培養には、合成培地であるCM培地を用いました。培養条件は、エタノールの終濃度が0, 0.5, 1, 2%となるように調製した4条件です。培養は、12時間明/12時間暗条件で1% (v/v) CO2 (in air)を通気し、8日間行いました。また、細胞の沈降速度は、培養8日目の細胞を濃縮し、濁度をOD730=10に合わせたサンプルを同時に静置開始して、タイムラプス撮影および画像解析を行うことで調べました。その結果、コントロール条件では24時間以内に全ての細胞が沈み切らないのに対し、0.5%, 1% EtOH条件では1時間後にほとんど全ての細胞が沈むことが明らかとなりました。また、0.5% EtOH条件では、コントロール条件と比較し、細胞の大きさは約1.2倍、1細胞あたりの重さは約1.5倍重く、パラミロン含有率は約13倍高く、形態は球形に近く、運動性が低くなるという結果が得られました。この結果から、ユーグレナ細胞の沈降速度には、これらの複数の要素が影響を与える可能性が示唆されました。また、重力沈降法の効率化のために細胞を沈みやすくすると、細胞の増殖途中の段階でも沈降が起こりやすく、撹拌を強くする必要があったり、培養が難しくなる可能性があります。そのため、対数増殖期である培養4日目、定常期前期である培養8日目、定常期後期である培養14日目の沈降の様子を調べることで、生育段階ごとの沈降速度を明らかにしました。結果から、対数増殖期である培養4日目では沈降速度がコントロール条件と比較して向上しないのに対して、定常期前期である培養8日目では最も沈降速度が速くなることが分かりました。
 本研究の成果は、エタノールを用いた培養と重力沈降法を利用すると、細胞生産量、パラミロン生産量の向上に加えて、培養後に特別な処理をすることなく、ユーグレナ細胞を効率的に回収できる可能性を示唆しています。

ユーグレナ研究会HP:
http://web1.kcn.jp/euglena/Euglena_Research_Association/Home.html
農芸化学科HP:
https://meiji-agrichem.jp/
環境バイオテクノロジー研究室HP:
https://osanaimeiji.wixsite.com/website