現代社会における数学や理科のニーズの高まりを受け、中央教育審議会では数学と理科を融合した「数理探求」の授業を高校に新設する案が出ています。現象数理学科はまさにこの流れの嚆矢(こうし)となる学科であり、新しいスタイルの数学教員の直線コースといえます。
そんな現象数理学科の特色を表すユニークな講座が「実験数学教育」です。この講座は中学・高校で身近な現象の数理探求を行おうとするものです。振り子の運動の等時性は、小学校で親しみましたね。高校の物理の教科書は、ここに「揺れ幅が非常に少ない時」と記述しています。数理の目では“何をもって少ないとするか”を大切にします。講座ではこうした曖昧で定性的な記述を数値積分で数値化し定量的に評価し直すことで、学生たちの「なるほど」を促します。ちなみに、今は曲がって伸びるマジックハンドはどうしたら作れるかという実験を計画中です。
教員は社会の変革者です。日本の現状を鑑みると、数理で世界を見渡せる目を持つ数学教員は、その目を次世代に伝える重責を担っているといえます。教員を目指す高校生には数理で世界を捉え、知を世の中に活かす「智」を磨いてほしいと思います。そのためには学校の外に出てみましょう。外から見て、初めて学校の勉強の価値が解ります。そして何でも「自分の手で」やってみる。この2つを忘れないでください。