Go Forward

政治経済学部

【政治経済学部 海野素央ゼミナール】ウクライナ避難民との効果的な異文化間コミュニケーションについてヒアリング調査を実施しました

2023年08月24日
明治大学 政治経済学部事務室

 政治経済学部海野ゼミナールでは、2023年6月28日に「ウクライナプロジェクト」第6弾を実施しました。

第6弾では、認定NPO法人「難民を助ける会(AAR: Association for Aid and Relief, Japan)」のプログラム・コーディネーター櫻井佑樹氏に、対面でヒアリング調査を実施しました。「難民を助ける会」は、1979 年に設立された日本発祥の人道支援団体です。櫻井氏は昨年1年間で、約230名のウクライナ避難民と接触しました。今回のヒアリング調査の目的は、ウクライナ避難民に対する効果的な異文化間コミュニケーションのスタイルを明確にすることでした。

以下で、ヒアリング調査の一部を紹介します。


Q1 日本人とウクライナ人ではコミュニケーションの仕方に違いがありますか。

A1 そもそもコミュニケーションの仕方は、人それぞれだと思います。大きな傾向はありますが、私はあまり気にしていません。というのは、ステレオタイプ(固定観念)をつくってしまうからです。ウクライナ人は「率直」ないし「遠回し」のどちらのコミュニケーションをとりますかと聞かれれば、率直な表現をする傾向がありますと回答します。ストレートに物事を伝え、遠回しな表現をしない傾向が強いです。しかし、私は、コミュニケーションの仕方は国民性というより、個人によるところが大きいと捉えています。

Q2 文化的背景の異なる人とコミュニケーションを取る際、表情や動作といった非言語コミュニケーションに注意を払いますか。

A2 ウクライナ避難民を含めた異文化の人と接する際、第1に私は、相手を傷つけるようなジェスチャーは絶対にやりません。また、ウクライナ避難民の生活相談では、傾聴が極めて重要です。積極的に傾聴すると、相談に来た時の表情と、相談を終えて帰る時の表情が明らかに変わったと言えるウクライナ避難民がいました。


Q3 ウクライナ避難民の生活支援をする上で、彼らのニーズをどのようにして把握していますか。

A3 私は「何にお困りですか」と、直接聞くようにしています。しかし、初対面の場合、相手が率直に話していないだろうと気づくことがあります。実際、私たちも初対面の人に自分が困っていることを話そうとはしません。ウクライナ避難民に限らず、相手と効果的なコミュニケーションを取るには、まず信頼関係を築く必要があります。信頼関係の構築ができていないと、ウクライナ避難民は「私は大丈夫です」と言って、本当は困っていても、心を開いて正直な気持ちを語ってくれません。加えて、ウクライナ人は自立心が強いです。「施しを受けたくない」という気持ちを持っているウクライナ避難民が多く、彼らは「働いた対価」として支援を受けたいと考えています。


今回のヒアリング調査では、ウクライナ避難民と効果的な異文化間コミュニケーションを取るには、自分の意見を押し付ける(push)のではなく、傾聴を通じて、引き出す(pull)ことが不可欠であると学びました。さらに、信頼関係の構築が不可欠であることを改めて学習しました(篠原季帆)。