Go Forward
2025年01月09日
明治大学
理工学研究科応用化学専攻生体関連材料研究室(相澤 守教授)では、人工骨材料として臨床応用されている、ヒトの歯や骨の主要な無機成分の一つである水酸アパタイト (HAp) やβ-リン酸三カルシウム (β-TCP) などのバイオセラミックス開発を推進しています。人工骨材料は形状が自由かつ、供給量に制限が無いという利点を有するものの、骨形成能において患者自身の骨である自家骨に劣っています。自家骨に含まれる生体アパタイトは、Na⁺, K⁺, Mg²⁺, F-, CO₃²- などの多様な骨ミネラルを含み、その結晶構造内には多くのナノレベルの欠陥構造を有しています。これらの要因が、自家骨が優れた骨形成能を示す要因の一つであると考えられています。本研究では、生体内微量元素である Mg²⁺ と Zn²⁺ イオンをHApに共置換した材料を作製し、二種の陽イオンによる相乗効果の影響について明らかにすることを目指しています。
本発表では、Mg²⁺ と Zn²⁺イオンを水酸アパタイト (HAp) に共置換固溶した材料を作製し、得られた材料の特性評価およびX線回折法によるRietveld 解析を行なった結果、その結晶構造解析に成功しました。これらの知見は、骨形成能の向上が期待されるMg²⁺やZn²⁺イオンの溶出量制御に繋がることが期待できます。
上記の研究成果が認められ、今回の「無機マテリアル学会講演優秀賞」の受賞につながりました(34件中7件が受賞)。なお、無機マテリアル学会は、無機材料に関係する学術の振興および産業の発展のための技術開発や研鑽に努めている学会であり、2025年に創立75年を迎える無機材料に特化した伝統ある学会のひとつです。今回の講演会は149回目を数えます。
なお、この研究は、明治大学生命機能マテリアル国際インスティテュートの一環として実施されました。
受賞名:無機マテリアル学会講演優秀講演奨励賞・化学情報協会 (JAICI) 賞
学会名:第149 回無機マテリアル学会 学術講演会
発表者:〇橋本水月・相川奨真・廣澤 駿・深澤倫子・相澤 守
演 題:超音波噴霧熱分解法により作製したMg²⁺およびZn²⁺ イオンを共置換した水酸アパタイトセラミックスの結晶構造解析