理工学部 物理学科の生物物理第一研究室(光武 亜代理准教授)に所属する理工学研究科 物理学専攻 博士後期課程3年の横井 駿さんが筆頭著者となった論文が、国際学術雑誌The Journal of Physical Chemistry BにおけるVolume 126, Issue 25 (2024)のFront cover(表紙絵)として選出されました。なお、本研究は、関西医科大学 医化学講座の寿野 良二准教授との共同研究です。
論文タイトル:Structural and Computational Insights into Dynamics and Intermediate States of Orexin 2 Receptor Signaling
オレキシン2受容体は、睡眠に関わる重要な機能を担っているGタンパク質共役受容体(GPCR)です。近年、オレキシン2受容体の不活性状態の構造だけでなく、活性状態の構造も明らかになり、リガンド結合や活性化メカニズムについて議論が行われています。しかし、オレキシン2受容体を含めたGPCRは不活性・活性状態だけでなく、様々な中間状態を形成することが知られており、創薬応用に向けた動的性質の理解の重要性が示唆されています。本研究では、目に見えない生体分子などの振る舞いを計算機によって原子レベルで予測する手法である分子シミュレーションを大規模に実行し、光武研究室で独自に開発されてきた動的解析手法である緩和モード解析をデータ解析に適用することで、オレキシン2受容体の活性化における原子レベルの動的性質や中間状態に関する特徴量を抽出しました。さらに、得られた特徴量を定量的に評価することによって、他のGPCRにおける特徴量の普遍性についても議論しました。活性化や中間状態のダイナミクスを原子レベルで理解することは、ナルコレプシーの治療薬としてオレキシン2受容体に特異的に結合する薬剤の開発における重要な知見となることが期待されます。