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農学部

【農芸化学科】環境バイオテクノロジー研究室(小山内崇准教授)4年生の井関夏奈子さんが第39回ユーグレナ研究会で若手優秀発表賞を受賞しました

2024年11月06日
明治大学 農学部事務室

受賞した井関夏奈子さん(農芸化学科4年)受賞した井関夏奈子さん(農芸化学科4年)

環境バイオテクノロジー研究室(小山内崇准教授)4年生の井関夏奈子さんが第39回ユーグレナ研究会で若手優秀発表賞を受賞しました。

発表演題「Synechocystis sp. PCC 6803における2-オキソグルタル酸(2-OG)合成酵素の増強に伴う2-OG維持メカニズム」

研究内容:
生物において、炭素/窒素(C/N)バランスの維持は、代謝活動や成長において非常に重要です。特に、炭素・窒素同化を行う最も始原的な独立栄養生物であるシアノバクテリアは、炭素・窒素の利用可能量が変動する中でC/Nバランスを維持するために、厳密な調節を必要とします。

シアノバクテリアにおけるC/Nバランス維持には、2-オキソグルタル酸(2-OG)が非常に重要な役割を果たしています。2-OGはクエン酸回路の中間代謝産物であることに加え、窒素同化経路においてアミノ酸の合成に利用されることから、炭素・窒素代謝を結ぶ鍵代謝産物とされています。また、2-OGは様々な炭素・窒素代謝を制御する転写因子の活性化に関与することも知られています。
鍵代謝産物である2-OGは、通常の条件下では一定量に維持する必要がありますが、その維持メカニズムに関してはあまり注目されていません。そこで、2-OG供給量を増加させた際に、2-OG量の維持が可能であるかを検証しました。本研究では、モデルシアノバクテリアであるSynechocystis sp. PCC 6803(シネコシスティス)において、2-OG合成酵素をコードする遺伝子を過剰発現した変異株を作製し、2-OGを含む代謝産物の解析を行いました。

その結果、変異株ではコントロール株と比較して、2-OG量が増加しなかったものの、タンパク質およびに炭素の貯蔵源であるグリコーゲンの増加が確認されました。これらの結果から、シネコシスティスは、2-OG供給量が増加した際に、アミノ酸への変換を促進することで2-OG量を一定に維持していることが示唆されました。また、グリコーゲンの増加は、細胞内の総炭素量の増加を示唆しており、2-OG供給量の増加に伴って炭素同化が促進された可能性があります。
本研究の成果は、シアノバクテリアにおける2-OG維持機構に対する新たな知見の提供に加え、炭素・窒素代謝の理解を深める一助となることが期待されます。

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