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農学部

【農学研究科農芸化学専攻】博士前期課程2年 秋山実里さんがユーグレナ研究会第38回研究集会で若手優秀発表賞を受賞しました

2023年12月09日
明治大学 農学部事務室

秋山実里さん秋山実里さん

 2023年11月11日に明治大学生田キャンパスで開催されたユーグレナ研究会第38回研究集会において、農学研究科農芸化学専攻・環境バイオテクノロジー(小山内崇准教授)研究室の博士前期課程2年 秋山実里さんが若手優秀発表賞を受賞しました。

発表演題
Synechocystis sp. PCC 6803による水素生産とNADH/NAD⁺比の関連の解析」

 近年、化石燃料の枯渇や地球温暖化が問題視されており、カーボンニュートラルな社会を実現するための新しい技術が求められています。シアノバクテリアは、酸素発生型の光合成を行う細菌であり、光合成により固定した二酸化炭素をもとに、水素や、有機酸など、様々な物質を生産します。水素は燃料として、有機酸はバイオプラスチックの原料や医薬品、産業分野での利用が期待される有用物質です。そのため、シアノバクテリアは、化石燃料に代替する有用物質生産の有望な宿主であると考えられています。

 シアノバクテリアの一種であるSynechocystis sp. PCC 6803(シネコシスティス)は、水素を生産可能であり、水素は、ヒドロゲナーゼという酵素によって、NADHやフェレドキシンなどの還元力を用いて生産されます。還元力は、酸化型と還元型という2つの形をもち、細胞内の反応で酸化または還元されることで、繰り返し使われます。そのため、還元力の絶対量や、還元型の割合を増加させることで、水素を増産できる可能性があります。
 また、シネコシスティスは、水素を生産する培養条件で、コハク酸や乳酸、酢酸といった有機酸も生産します。コハク酸や乳酸の生産には、水素と同様に、NADHが用いられます。一方、酢酸を生産する過程では、NADHが生じます。そのため、コハク酸や、乳酸、酢酸の生産に関与する酵素を欠損した遺伝子改変株では、NADHの酸化・還元のバランスが変化している可能性があります。そこで今回、私たちは、コハク酸、乳酸、酢酸の生産に関与する酵素を欠損した遺伝子改変株を用い、各株の水素生産量と、NADHの絶対量、および還元型の割合を解析することで、シネコシスティスの水素生産が、NADHの絶対量や還元型の割合によって影響を受けるかを調査しました。

 その結果、水素生産量が、野生株と比べて増加または減少のどちらかに変化すると、NADH濃度が減少することが分かりました。さらに、水素生産量が減少した場合、NADHの還元型の割合を表すNADH/NAD⁺比が低下していることが明らかになりました。これらの結果は、シネコシスティスにおける水素生産と、NADHの絶対量や還元型の割合の関連を示し、NADH濃度やNADH/NAD⁺比の測定が、水素生産に有望な遺伝子改変株の探索に有用である可能性を示唆しています。本研究の成果は、シネコシスティスによる水素生産に対する理解を深める一助となる可能性があります。