Go Forward

研究科長あいさつ

知的フィールドへようこそ

経営学研究科長   牛丸 元



「あなた方は今、日本経済史上最も面白い局面にいて、それを客観的にみることができる。今後どうなるか、是非とも見極めてほしい」。私が勤務していた都市銀行を辞めて、大学院で勉強をしていた頃の、ある講義初日の教員の第一声です。ご存じの通り、バブル経済が始まっていた頃で、日本経済は活況を呈し始めていました。教員はこれに警鐘を鳴らしたわけですが、マスコミのみならずエコノミストまでもが、それを封じ込めるような論調が多かったのを記憶しています。そうしたなか、ある友人はこの問題に果敢に挑戦し、バブルであるという修士論文を書き上げました。株価変動に関する理論をベースとし、各種数値データを多変量解析により統計的に分析した実証論文です。この論文が正しかったということは数年後に明らかになりますが、ここで重要なことは、今現在当然視されているようなことに対し疑問を投げかけ、理論ばかりではなく何らかの方法により、これを確かめようとする研究姿勢です。

大学院生のなかには、とくに社会人大学院生に多いのですが、自分の経験から生まれた仮説を確かめたいがために、都合の良いデータや考え方を採ってきて、無理矢理証明しようとする傾向があることです。これは、バブル経済期に、都合の良いデータや論調のみに頼って客観性を欠いた主張をしたマスコミやエコノミストと変わりがありません。大学院は自説を通すためではなくて、それを、さまざまな理論や分析方法によって確認し、修正し、より深いものに進化させる場であります。客観的な立場から経営に関する研究をしてください。そのために、経営学研究科では、研究領域を9つの系統に分けてさまざまな知識を獲得し創造できるような科目を提供しています。

学問の場は日本国内にとどまりません。イギリス、フランス、ドイツ、ニュージーランド、中国、韓国などの協定校と独自の留学プログラムを持っています。アジアの工科大学でトップクラスのマレーシア工科大学との間には、ダブルディグリー・プログラムがあり、毎年、何名もの大学院生が留学をし、工学修士を取得しております。また、修士課程修了者の多くは、グローバル企業への就職が多いのですが、さらに研究を深め大学教員などへの道を希望する院生には、後期課程への進学が用意されています。経営学の大学院としては私立大学で最も古い研究科(1959年設立)の1つとして、多くの博士号が授与され、多くの大学教員が輩出されています。

世の中の風潮に惑わされることなく、客観的な立場から、疑問を追究することができるのが大学院という知的フィールドです。道は無限に開かれているといっても過言ではありません。経営学研究科で自分の可能性を大いに伸ばしてください。
明治大学大学院