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2025年度情報コミュニケーション研究科フォーラム開催報告

2025年度情報コミュニケーション研究科フォーラム開催報告

総合司会/コーディネーター:中臺希実(研究・知財戦略機構) コーディネーター:須田努(大学院情報コミュニケーション研究科)

2026年2月24日
情報コミュニケーション研究科
 

研究科フォーラム開催報告 司会 中臺希実(研究・知財戦略機構) 

 
20251220日(土)、情報コミュニケーション研究科では『江戸と社会文化と吉原』と題して、大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」で取り上げられている蔦屋重三郎や田沼意次が生きた江戸中期を田沼意次という政治家を理解しつつ、田沼意次・蔦屋重三郎・吉原をキーワードとして、江戸中期の社会文化と民衆の生活を重層的に理解できるフォーラムを、対面方式で開催した。江戸中期の社会の様相を読み解き、当該期の江戸文化の特性をジェンダーの視点を踏まえて解説し、さらに、蔦屋重三郎らが手がけた出版や、歌舞伎・浄瑠璃などの芸能ともつながりが深い吉原と、そこで生きた遊女たちの実態から、客たちの「理想」と遊女たちの「現実」を解説した本講座は、参加者700名を超え、大盛況となった。

研究科フォーラム概要
日時 20251220日(土)13001500
場所

明治大学駿河台キャンパスアカデミーコモン3階 アカデミーホール

主催 明治大学大学院情報コミュニケーション研究科
 ※リバティアカデミー特別企画講座と連携して開催
総合司会 中臺希実(研究・知財戦略機構特任准教授)
報告者

須田努(明治大学情報コミュニケーション学部教授)
 「田沼時代の政治と社会 3つの問いから」
中臺希実(研究・知財戦略機構特任准教授)
 「江戸の出版文化と描かれる遊女・遊廓」
髙木まどか(東海大学文学部特任講師)
 「吉原に生きた遊女たち」


 研究フォーラムでは、3名の報告者による報告が行われた。以下では、報告者それぞれの報告内容を簡単に報告する。


・須田努「田沼時代の政治と社会 3つの問いから」

日本近世史、社会文化史、民衆史を専門とする須田氏より、田沼時代を3つの問い「田沼意次の出現」「蔦屋重三郎の登場」「幕府が世論を重視した理由」をキーワードとして、江戸中期の社会と政治文化を説明頂いた。田沼意次は享保の改革において限界を迎えていた幕府財政や農業政策の限界の解決の求めに応じて登場したが、地盤の弱い田沼「家」の弱点を克服出来ず失脚していったことを論じられた。蔦屋重三郎の登場に関しては、円熟した民間社会の形成、それによる地方豪商の出現を示し、地域格差や経済格差を生じさせながら、娯楽や好事家的こだわりを追求された時代背景、風刺文化の形成から説明した。幕府の世論重視に関しては、伝馬騒動、絹一機、江戸打ちこわしなど、幕府政策の撤回や田沼意次の隠居、謹慎に追い込んだ事例を紹介し、民衆と幕府の緊張関係を具体的に論じられた。さらにその後の幕藩体制が抱えた構造的な問題、江戸の文化として隆興していった文化文政期、民衆の力量の変化を説明された。

・中臺希実「江戸の出版文化と描かれる遊女・遊廓」

 本報告では、地域や階層を超え、書物や摺り物を媒介として均質な情報がいきわたった「本の文化時代」としての江戸時代を江戸の出版文化から概説しつつ、出版文化を興隆させた蔦屋重三郎と吉原、出版、寛政の改革、それぞれの関係を説明した。さらに、人形浄瑠璃や歌舞伎などのメディアによって形成された遊女・遊廓像を示しながら、これらの肯定的なイメージは、あくまでも男女の上下関係や社会構造の維持のためのものであり、出版メディアによってコントロールされたものであったことに言及した。

・髙木まどか「吉原に生きた遊女たち」

  日本近世史を専門とする高木氏からは、吉原遊廓について、浮世絵や絵図、吉原細見などを用いて、その成立から見世の配置、遊女のランクや人数など具体的に概説していただいた。公許としての吉原と非公許としての岡場所の違いなどにも言及頂き、吉原遊廓が江戸の社会における位置づけについても触れられた。遊女そのものに関しても、廓言葉の習得理由や遊女の生まれ、遊女屋の主人や遣手、女衒などの遊廓社会を形成する人々も説明された。遊女の人生、身請け、脱走、病気や妊娠、出産に関しても言及され、妊娠・出産は禁忌とするイメージがもたれる遊女であるが、遊女評判記では遊女の出産に関する記述がみられ、さらには「平産」という安産を喜ぶ様子が多いことから、評判記に名前が挙がるような人気の遊女に限っては、妊娠・出産への批判はさほど強くなかった可能性を示された。ただし、これは時代とともに変化したであろうことも説明された。最後に、遊女たちにとって「苦界」であった遊廓が、理想視されそのイメージが再生産されている点に触れ、遊女が残した史料の少なさを指摘し、理想化された遊廓は男性目線で記された史料から形成されたものであることに注意する必要性を論じられた。

ディスカッション



  総合司会の中臺より、全体的な総括が行われたあと、各報告に対するコメントと質問がすすめられた。時間的制約があるなか、短いディスカッション時間となったが、蘭学・医学への関心が醸成される一方、民衆が文化の担い手になっていったと評価される江戸中期の社会を政治、文化、吉原という多角的な視座から検討する、有意義な場となった。

 

本フォーラムにご参加いただいた皆様に、改めて深く感謝申し上げます。

研究科フォーラムポスター

明治大学大学院