ビジネスなど人間が関わる現象を数学で解明しようとするとき、元のデータには必ず誤差や間違いが含まれます。この不確実性を含めて数式化する際に欠かせないのが確率・統計です。
私が携わる研究の一つに、サッカーの試合のデータを使った「スポーツ時系列イベント検出」があります。将来は無人カメラが試合を撮り、特定の場面だけを自動的に検出して編集までできるようになるかもしれません。このような検出にはベイズ統計が非常に有効です。ベイズ統計は確率を積極的に使おうという考え方で、結果から原因を予測する確率を計算します。図のように赤と黒の球が入ったAとBの壺があり、赤球が1つ出てきたとします(図)。赤球の出処は五分五分だと仮定すると、赤球がAの壺から出た確率は75%と計算できます。これがベイズ統計の仕組みです。
ベイズ統計を含め確率・統計はビジネスやITの世界で非常に注目されています。2009年にはグーグルのチーフエコノミストが「今後10年間で一番魅力的な職業は統計家だ」と発言し、国内でも統計学の本がビジネス書のベストセラーになりました。こうした書籍を読んでいるのは30~50代のビジネスマン、つまり皆さんが就職するときの面接官であり、将来の上司です。高校生の皆さんには文系理系を問わず、確率・統計は特に勉強してほしいと思います。