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数理のチカラ − 森 秀樹

手紙の実験から生まれたネットワークの高速化

明治大学 総合数理学部 ネットワークデザイン学科 森 秀樹



あなたが友人に手紙を送るとします。手紙は友人から友人へ手渡しされます。さて、その中継点はいくつになるでしょう。答えは約6人です。この社会科学の実験結果は、世の中は狭かったという意味でスモールワールド現象と呼ばれます。この現象はランダムなネットワークが鍵を握っており、私はこれをハードウェアに応用しようと考えました。

従来のコンピュータは常にメモリを介して計算するため、多くの情報が一度に集中すると混雑してしまいます。そこで私はメモリを使わずにCPU同士をネットワークでつなぐことにしました。しかしネットワークが複雑になると転送に時間がかかってしまいます。そこでヒントにしたのがスモールワールド現象でした。スモールワールド・ネットワークはCPU間のネットワークに乱数によるランダム性を持たせて転送時間を短くするもので、実験の結果わずか10%のランダム性で転送時間を大幅に短縮させることに成功しました。今私はこのネットワークの実装化に向けて取り組んでいます。

私はこの研究で確率を使うようになりましたが、数学は基礎力があればいつでもその力を活用できます。私の話に興味のある高校生の方は、論理的思考に必要な数学の基礎をぜひ身につけてほしいと思います。

森 秀樹 / スモールワールド型並列、分散VLSIコンピュータアーキテクチャの研究
コンピュータネットワークをVLSI チップ(超大規模集積回路)に収める研究を行っています。VLSIチップ内のランダム性を有するネットワークによる並列/分散処理で、高速、低電力処理の実現を目的としています。

数理のチカラ : ネットワークデザイン学科

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