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研究科長あいさつ

「知の泉」、文研へ! ——小さなテーマから、より大きく普遍的な「問い」へ

文学研究科長  Dr.phil. 水野 博子



 21世紀もすでに四半世紀が過ぎつつある今日、世界は激動の時代を迎えています。情報技術の発展であれ、社会の多様化であれ、その動きはめまぐるしく、しかも多方向的です。そうした変化や革新のおかげで、人類が受けた恩恵は少なくありません。その反面、多くの問題も噴出しています。広がる社会格差や環境問題もその一部でしょう。様々なレベルで、不可逆的な構造転換が起こっているのかもしれません。目まぐるしく変化する時代だからこそ、ものごとを冷静に考え、様々な方面から立体的に問題提起していく力が必要とされています。その意味で、人文科学は、専門的な知見に基づく洞察力と幅広い学びに立脚した高い教養力の両方を磨く学問であり、簡単には答えが導き出せない「問い」を立てる思考力の醸成においてこそ、本領発揮する分野であるように思います。

現代世界に満ちた複雑な課題に取り組むために、明治大学大学院・文学研究科(以下、文研)は全部で14の専攻・専修を擁し、文学、演劇学から史学、地理学、心理学、社会学、教育学まで、個々のディシプリンに分かれるスタイルを特徴としています。激動の世界に生きる以上、分野横断的な思考力が重要度を増していることは言を俟ちません。しかし、実際に何かの問題についてその本質を見極めようとすると、研究の土台となる専門性がさらなる思考の手がかりになることもしばしばです。もっとも、小規模な専攻・専修制が、高いポテンシャルに満ちた大学院生を狭い流儀の中に閉じこめてしまっては、元も子もありません。文研では、専門にかかわるゼミや演習のほかに、様々な角度からの「他流試合」に向けて、複数の共通科目が用意されています。2024年度からは学部生と大学院生とが共に学べる「特修外国語」も新規に開講されます。また、大学院全体を横断する共通プログラムとして、データサイエンス関連の科目も新設されます。複数の研究助成プログラムも整備されています。大学院で研究を志す皆さんには、専攻や研究科の垣根を越えて、いろいろな分野の教授陣・研究者と積極的に学術交流を試みてほしいと願っています。

大学院では、限られた期間で研究発表や論文執筆を求められることも多く、ある程度コンパクトなテーマを設定する必要が出てきます。その際、大事なことは、その一見小さく見えるテーマを「スコープ」にしつつ、より大きく普遍的な「問い」を探究することではないかと思います。そのような力を身に着けた文研の修了生が社会の第一線で活躍しています。

最後に、文研は、多様なバックグラウンドを持つ構成員から成る研究科です。それらの一人ひとりが、自由かつのびのびと研究生活を送れるよう、研究科としてもできる限りのサポートをしていきたいと思います。文研という「知の泉」で一緒に学びませんか。


 
明治大学大学院