<新しい発見>のために
文学研究科長 田母神 顯二郎
文学研究科長に就任するのは、今回で二度目となります。一度目は、2020年4月。コロナ禍が世界を席巻し、闇に包みこんでいくまさにそのさなかでした。あのときほど、「知」の灯火(ともしび)がかけがえのないものに思えたこともなく、またそれが今にも消えそうなくらい危機的状況にあることに慄然としたこともありませんでした。それから6年。みなさんも知るとおり、世界はつぎつぎとさらなる激変に見舞われ、「知」そのものへの蛮行とそれによる「知」の衰弱は、いっそう露わになっています。
しかし、そのような状況だからこそ、<新しい発見をもたらす>という「知」の本領に立ち帰り、この創造的な力を各人のうちで磨いていかなくてはいけません。<新しい発見>の連続こそ、人間の生に必要なものであり、それをこのうえなく充実したものに変えていく秘薬なのです。近代科学の礎を築いたフランシス・ベーコンが説いたように、「学問の真の正当な目的は、人間生活に新しい発見と新しい力をもたらすことに他ならない」のです。
13の専攻と専修から構成される文学研究科は、こうした「人文学」Humanitiesの伝統に則り、「知」の訓練のための格好のプラットフォームを用意しています。創造的な「知」を手に入れるには、それなりの基礎やスキルが必要です。資料を精密に読み、歴史を長いスパンで捉え、他者の言動を理解し、異文化を行き来する力と技術が必要です。そして何より、これまで以上に多くの先人たちの「方法」を学んでいかなくてはいけません。どの分野に進もうと、ここで学んだことは、必ず重要なライフ・スキルとして皆さんの一生を支えつづけることでしょう。

