須田努:今回の流行についての自由と規制がごくうらはらの関係だということがよく分かってきたと思います。特に鈴木先生の報告では、それがとても出てきていました。
今日話題に出なかったことで、少し言いたい点があります。日本の制服の誕生は軍隊の影響があります。日本の近代教育の導入で一番重要なのは、国民の形成にあたって、時間による規制という概念を持ち込むことでした。そのことと軍隊で導入された制服が学校に持ち込まれることは関係していると思います。
もう1つ、流行と規制とを考えていきますと、ものすごく性規範が強いと思うのです。例えば、男性は流行を追うなという環境が、すごく強い。流行を追うのは女性であって、男性はそんなものを追っている場合ではないのだとか。それがまだとても強くて、学校でも見えないような形にしても、それがあるのではないかと思いました。
それから、ステマの話です。私はナイーブな消費者なのかもしれません。ステマの線引きはとても難しいものです。例えばYouTubeで商品の紹介──私の場合で言えばギターの紹介なんですが──を観ていると、良いことしか言わないわけです。映像を観た私は次の日に紹介されたギターを買いに行きます。そこでギターを買ってきて、私はとても幸福になるわけです。そういう問題もあるので、規制をどこまでしてしまうかというのも、少し気になるところです。
高馬: 流行をめぐる男女に関してフランスの例を1点申し上げます。フランスのルイ14世の時代というのは、ファッションを追えるのはエリート層でした。そしてエリート層の男性も女性も大変におしゃれだったわけです。いわゆる庶民は流行を追うものではなかった。ところが、フランス革命で市民が台頭します。そうすると男性はキュロットなどははかない(「サン・キュロット」Sans-culotte)感じになっていき、貴族のような格好をしなくなります。それに対して華美になり、富を見せるのはヴェブレンではないですけれども、女性の役割でした。
そのように、時代の流れの中で、それがどこの時代のものを引き継いで、それがどう定着したのか、ということを歴史的にみてみる必要があるのかな、と思いました。