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センター長より

センター長 牛尾 奈緒美 センター長 牛尾 奈緒美

 明治大学は「権利自由 独立自治」の理念を掲げ、戦前から積極的に女性の高等教育の機会を提供し、日本初の女性弁護士や裁判官を輩出するなどジェンダー平等を推進する高等教育機関の嚆矢となりました。同センターはこうした大学の伝統を受け継ぎ、新たな時代に向けたジェンダー問題の追及と男女共同参画社会の進展を目指し、二〇一〇年四月に情報コミュニケーション学部の中の一機関として発足いたしました。
 ジェンダー平等とダイバーシティ推進を希求する時代潮流を見据えるとともに学問におけるジェンダー主流化の流れに則り、同センターでは中心となる問題領域を 一.社会的規範により形成される性をめぐるイメージや役割である「ジェンダー」を中心に、性的指向(sexual orientation)と性自認(gender identity)に関する問題、 二.セクシャリティや障害、人種、文化、思想等の違いを乗り越え多様な価値が尊重される共生社会の実現を目指す「ダイバーシティ」の問題、 三.共有された規範に従い他者を同じ価値共同体の一員とする「承認」をめぐる課題 の三つに定め、個々のセンター員の課題認識に応じてさまざまな観点の研究や議論の場を展開してまいりました。この一〇年間の研究プロジェクトを振り返ると社会学、経済学、経営学などの多様な学問領域から、各国の女性労働の歴史的考察や近代のジェンダー規範の変容に関する研究、メディア、アート、ファッション、スポーツ競技におけるジェンダーや、家族形成、企業経営におけるジェンダーやダイバーシティ推進に関する問題など多種多様な研究が行われています。
 グローバル化や情報化の進展が著しい現代社会において、ジェンダーに関する問題はますます注目を集めています。日本のみならず国際社会において持続可能な社会の実現は喫緊の課題とされ、そのためにはジェンダー問題の解決が地球環境、貧困等の課題解決と同等に重要であるとの認識が広がっています。ジェンダー平等の達成は、政治、経済分野はもとより社会制度や企業経営、人々の働き方、暮らし方に大きな変化をもたらし、よりよい社会を生み出す不可欠な要件であると捉えられます。また、学問の世界においても、既存の学問が暗黙的に男性中心主義の下で展開されてきたことに対する再考が行われ、改めてジェンダーの視点で学問を問い直すいわゆる「ジェンダー主流化」の流れが加速し、各学問領域でジェンダーを分析視角とした新たな研究が数多く行われるようになってきています。
 ジェンダー研究の深化が、ジェンダーに留まらず社会に存在するさまざまな差異や多様性への気づきを促し真の共生社会の誕生に寄与することを願います。