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研究プロジェクト 2021年度

2021年度

A「企業のダイバーシティ推進の実態調査」

牛尾奈緒美
 ダイバーシティ・マネジメントの推進を先進的に取り組む先進企業に対して,大規模な従業員調査を行い,同取り組みによるイノベーション創出の効果を多変量解析により分析を行った。また,従業員個人の働き甲斐や,就業意識など組織的効果や,生産性など,具体的な効果の有無についても統計的な手法を用いて検証を行った。
 調査にあたり既存研究のサーベイを行ったところ,従業員⼀⼈ひとりが,⾼い帰属意識と⾃⽴性をもった組織は,インクルージョンが成立する組織,いわゆる「⾼包摂組織」と位置付けられる。⾼包摂組織は,ダイバーシティを⽣かし,従業員の会社や仕事に対するポジティブな評価や⾼いパフォーマンスを⽣み出すと捉えられる。しかし,その形成要因や構成要素やメカニズムについての詳細はわかっていないため,本調査では,⾼包摂組織の条件や形成要因のメカニズムを明らかにすることを⽬的とした。調査対象である大手銀行,⼤⼿保険会社,⼤⼿⾷品会社,⼤⼿娯楽サービス会社,計4社の従業員に対して意識調査を実施し,回収された計6354 名の回答データをもとに分析を行った。
 SDGsの目標達成をはじめ,昨今は企業のガバナンスやコンプライアンスに対する社会的要請も強まっており,高包摂組織とダイバーシティ・マネジメントの推進がどのような関連性をもち,そのことが課題解決にどのような影響力をもちうるのか,ダイバーシティや高包摂組織による会社全体としての効果についてもさらに追及をしていきたい。

B「デジタルメディア時代の流行現象を通して形成される 規範的ジェンダー像: ファッションメディアにおけるマッチングアプリ利用者として 構築されるジェンダー像を事例に」

高馬京子
 メディアにおけるマッチングアプリ利用者として構築されるジェンダー像を事例に
 本プロジェクトは,デジタルメディア時代の流行現象を通して形成される規範的ジェンダー像について考察するため,ジェンダー像構築を検討するときに重要な一要素である恋愛に着目し,マッチングアプリを事例に検討した。
 デジタルメディア時代の 流行ファッション現象として浮上したマッチングアプリを通しての恋愛,婚活の流行現象が存在する。生活空間の中で実際に出会うのと異なり,これらマッチングアプリを通してオンライン上で人と出会い,恋愛するなど,様々な恋愛,婚活の形態の変化が見受けられる。このようなマッチングアプリをめぐるメディア,特に,ファッションメディア記事上では,どのようなマッチングアプリを利用して恋愛・婚活をするジェンダー像が構築されているのであろうか。調査方法として,1.日本の恋愛,婚姻(出会い)の歴史(日本の恋愛,結婚観),マッチングアプリ,デジタルメディア時代の親密性に関する関連論考を調査,2.代表的な年代別マッチングアプリの広告ページにおける規範的ジェンダー像の構築,3.日仏のファッションメディアにおける従来の恋愛,4.女性ファッション雑誌のマッチングアプリに関する記事,漫画,テレビなどにおける理想的ジェンダー像の構築の分析を行い,「マッチングアプリ」をめぐるメディア上における規範的ジェンダー像がいかに構築されているのか,それを生み出す今日の高度情報社会のメカニズム,プロセスを明らかにする第一歩としての調査をすすめた。また,同性愛者に関する研究との比較の視点から,文化人類学者砂川秀樹氏に「ジェンダー/セクシュアリティ研究の視点をめぐって〜オープンリーゲイの文化人類学者として〜」(情報コミュニケーション研究科特別講義)の話を伺い,本研究の参考とした。結論として,20代から40代向けのいくつかのWEB女性史では,様々なリスクも内包するマッチングアプリにおける「婚活」「恋活」,またそれらから派生して自分らしさの探求,向上心など違うものへと様々な欲望が渦巻く場で,一般情報誌,男性誌上で構築されている男性側の欲望,マッチングアプリ会社が織りなすだろうセルトーがいう戦略に対し,「被害者」ではなく,「戦術的」にリスク回避をしながら,どう自分の流動していく欲望を「婚活」「恋活」を通して見極め,選択し,発展させ粘り強く実現させていくために主体的・個人的選択を実践するユーザー像がメディア内で形成されている傾向が伺えるということ,そして,その像は様々な思惑のあるマッチングアプリという場をエンパワーメント空間にしているようにも見受けられた。その反面,ポストフェミニズムの女性の主体的選択という視点から考えると,このようにメディア空間でなされた主体的選択ができる/課される多様な欲望を有する20代‐40代のマッチングアプリ女性利用者表象は,マッチングアプリを年齢制限のエンパワーメント空間でもあり,かつ主体性の実践と,特に結婚,またそれ以外の欲望達成が困難,リスクが常にあるといったジェンダー不安の標準化を促す抑圧装置という表裏一体の場へと促しているのではないかと結論づけた。
ジェンダーセンター