今年度は、科研費の研究プロジェクト「企業の研究開発におけるジェンダー・ダイバーシティとパフォーマンス」(文部科学省 科学研究費基盤研究(C)(一般)研究代表者 牛尾奈緒美 令和2年度~6年度)に基づき、企業の研究開発部門の業績(同部門が発明する特許の質と量により評価)が、研究チーム内の人材多様性の程度とどのような関係性をもつのか、大量サンプルを用いて多変量解析を行い、いくつかの分析モデルを検出することで仮説検証を行った。組織内のダイバーシティ推進によるイノベーションの創出効果は既存の理論研究においても多数指摘されているところだが、特許に関する当該研究はこれまでになく、本研究の独自性を追求すべく来年度以降も継続的な調査研究を実施する予定である。本年度は、イノベーション・政策研究所(IIPR)主催の「イノベーションと政策研究」ワークショップにおいて、「発明者のジェンダーダイバーシティと特許の質」 の口頭発表を行った。
また、毎年筆者が企画とファッシリテーターを務め実施してきた大学主催による「企業トップの考えるダイバーシティ・マネジメント」を今年度はジェンダーセンター主催とし、ズームによるウェビナー形式で実施した。講師として、アクサ・ホールディングス・ジャパン株式会社代表取締役社長兼CEOの安渕聖司氏,株式会社大和証券グループ本社取締役兼執行役副社長の田代桂子氏を招聘し、講演並びにパネルディスカッション、質疑応答にご対応いただいた。女性のキャリア形成、LGBTQs、障がい者支援等,多面的に人材多様性の価値について語られ、ダイバーシティ推進にあたっての問題点や具体的事例、経営者自身のキャリア形成に関する経験談など忌憚のない意見が出され、参加者との質疑応答においても有意義な議論が展開された。トップマネジメントのダイバーシティ推進に対する考え方や、組織全体にその価値観を注入するインクルージョンについて実務に基づく知見を収集でき、今後の研究に生かしていきたいと考えている。